2018
09.12

【World MR News】日本マイクロソフトのパートナー企業向けイベント「Japan Partner Conference 2018」の基調講演をレポート!

World MR News

日本マイクロソフトは、8月31日にザ・プリンス パークタワー東京で最大規模のパートナーイベント「Japan Partner Conference 2018」を開催した。本稿はその中から、「デジタル トランスフォーメーションはすでに生活、ビジネスの一部」と題された基調講演の模様をお届けする。

マイクロソフトとして初めて売り上げが1100億ドル以上を達成

午前10時より始まった今回のイベント。まずは、マイクロソフトコーポレーション コーポレートバイスプレジデントのガブリエラ・シュースター氏から、今回の基調講演がスタートした。

ガブリエラ・シュースター氏。

初めて売り上げが1100億ドル以上を達成したという、マイクロソフト。IDCの調査によると、同社の売り上げ1ドルに対し9.64ドルがパートナーのエコシステムの中で生まれている。つまりこれらを合わせると、マイクロソフトのサービスやソリューションが、この1年間で1兆ドルもの経済効果を世界にもたらしたことになるのだ。

マイクロソフトが考えている「デジタルトランスフォーメーション」は、「ソサエティー5.0」と同じだとガブリエラ氏は語る。すなわち、社員にパワーを与えオペレーションを最適化し、顧客とつながり、顧客同士が繋がり、製品の改革も行える。

同社では現在3つの柱で仕事をしている。そこでは、パートナーが次の10億ドルのビジネスをするにはどうすればいいか考えている。正しいイネーブルメント、正しいリソース、正しい投資をパートナーの「Go-to-market」に対して行いたいと考えている。また、オポチュニティを繋ぎたいとも考えているという。さらには、パートナーにとってもっともシームレスな形でパートナーのソリューションを提供していくために、組織を作ってきているのだ。

その成果として、初年度で2万8000という新しいアプリケーション・サービス・ソリューションを提供することができた。そのうちの1000は日本で作られたものだ。また、300万件ものリードが生成され、10万件以上の高セルのオポチュニティが生まれている。その結果、10億ドルというパートナーの売り上げが達成できたという。そして、FY19においてもこの勢いを継続していきたいとガブリエラ氏は語った。

日本のデジタル変革に貢献しクラウドベンダーNo.1を目指す

続いて日本マイクロソフト株式会社 代表取締役 社長の平野拓也氏から、「インテリジェンステクノロジーによるデジタルトランスフォーメーションの推進」について説明が行われた。

平野拓也氏。

日本では売り上げは公開されていないが、Azure、Office 365、Dynamics 365の3つのクラウドに関しては、同等かもしくはそれ以上の成長を達成している。Fortune 500の94ポアーセントがクラウドを使用しており、日経225銘柄でも92パーセントが利用している。これは大企業に限ったことではなく、中堅や中小、教育機関などでも使われている。

2020年といえばオリンピックイヤーだが、それまでに人は1日1.5ギガバイト、自動運転は1日5テラバイト、スタジアムでは200テラバイトというように、これだけのデータをどんどん排出していく状況になっていく。そのなかで、インテリジェンステクノロジーのなかで我々は過ごしている。手に持てるものだけではなく、車もデバイスになり、IoT化されているものも増えていく。

そうした中で、AIデータベースなどのソリューションセットを持って、顧客のデジタルトランスフォーメーションとエクスペリエンスを変えていこうとしている。

マイクロソフトが力を入れている「AI」だが、同社のミッションはすべての個人や組織がより多くのことが達成できるようにすることだ。人間の創造性やすることを補完するために、より多くのことを学んだり早くできたり、想像力を具現化できるようにするため取り組んでいる。

同社のAIは、画像認識率や音声認識の誤認識率、文章の読解力においては、人間以上の能力を持っている。また、機械翻訳については約70パーセントと、人間と同等ぐらいの能力となっている。

今後は流通、ヘルスケア、政府・自治体、自動車、金融メディア&コミュニケーション、教育、製造などの産業において、パートナーの持つテクノロジーなどを合わせて提案していく予定だ。

2020年に向けて、働き方改革の「ワークスタイルイノベーション」、様々なテクノロジーによる「ライフスタイルイノベーション」、少子高齢化が進む中でビジネスを推進していく「シンダストリーイノベーション」の3つのイノベーションを推進していく日本マイクロソフト。

昨年は日本で2位のパブリッククラウドベンダーになったが、日本のデジタル変革に貢献し1番になりたいと考えていると平野氏は締めくくった。

デジタルトランスフォーメーションを促すことで26兆円の市場が生まれる

続いて、日本マイクロソフト株式会社 執行役員 常務 パートナー事業本部長の高橋美波氏より、19年度のパートナー事業の方向性について説明が行われた。

高橋美波氏。

2018年は沢山の成果が生まれたと、高橋氏。日本で作られたソリューションの数は865。その中で、新しい領域は123。クラウドソリューションプロバイダーも、事業全体で前年比392パーセントと大きく成長している。新規公開されたAzureベースのビジネスアプリが協業によって受注した案件数は391件。Azureの契約金額は、対前年で350パーセント。それと同時に、CSPのリセラー数が2200社となっている。

デジタルトランスフォーメーションを促すことで、日本では約26兆円の市場が生まれると同社では見ている。特にAI市場については、2020年に向けて様々な業種・業態で大きく増えていくと考えている。特に、製造、金融、情報などでのコアインダストリーのAIを合算すると、2020年に向けては、9000億円を超える市場規模になるだろうと言われている。

同社ではAIの民主化ということで、様々なソリューションを仕掛けてエンドカスタマーに使ってもらい、デジタルトランスフォーメーションを促していく。

AIの学習結果を使った推論にはCPUやGPUよりFPGAが優れている

パートナー企業の事例紹介を挟んで、日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 エバンジェリストの西脇資哲氏より、デモンストレーションが行われた。

西脇資哲氏。

AIによって影響を及ぼす、向こう3年間の金額は1.2Tドルといわれている。また、企業の85パーセントはAIを導入するなど、なんらかの関わり合いを持つ。AIを活用するには、多くのデータセンターとクラウドを活用することになっていく。

マイクロソフトでは、海の中にデータセンターを用意している。理由のひとつは空冷効果で、もうひとつは人口密集地域が海に近いからだ。

こうしたものの背景には、リアルタイムAIに対する需要が高まってきているからだ。スマホのカメラで写したものに何が映っているかAIで判別させるときに、それはリアルタイムAIではなく画像や動画をAzureに送り、そのサービス上で推論されたものが表示されているのだ。

そこで、もっと早く動体検出をするために、カメラ側でできればいいのではないかということで生まれたのが、スマートスピーカーのようにスタンドアローンで利用できる日本初披露のAI搭載カメラだ。今回は、Googleの研究部門が作った「モバイルネット」と呼ばれるニューラルネットワークを、このカメラの中で展開し画像の認識が行えるようにしている。

動いているものがリアルに認識できるの確認するために、本物の猫が会場に登場。実際にこのAIカメラで認識させるというデモが行われた。

こうしたAIで重要なのは、画像の処理だ。そこでCPUやGPUに変わるものとして注目を集めているのが「FPGA」である。人工知能による学習結果を使った推論は、CPUやGPUではなくFPGAで行った方が、性能が良く展開が素早いということがわかっている。

マイクロソフトでは、このFPGAを使って地球温暖化・地球環境変化についての様々な人工知能を使った取り組みを行っている。

こちらがFPGAだ。

CPU、GPUと速度を比較したが、圧倒的にFPGAが上回っていた。

このほかデモではデータセンターを持ち出すという考え方の「Azure Stack」や新しい会議スタイルを提案する「Microsoft Whiteboard」、Mixed Realityを利用した「Microsoft Layout」と「Microsoft Remote Assist」などの紹介、Windows7、Office 2010のサポート終了、新たな年号変更に合わせた対応などの紹介が行われ、今回の基調講演は終了となった。

 

Photo&Words 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑紙の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。