07.03
【World MR News】MRにおける空間表現の未来/UI/UX――「第8回VRビジネスフォーラム」レポートその③
6月22日に東京・恵比寿のフェローズでMixed Reality開発先進企業によるセミナー「第8回VRビジネスフォーラム」が行われた。
本稿ではその中から、第1部に行われたPsychic VR Lab VRデザイナー メディアアーティストGod Scorpion氏による「MRにおける空間表現の未来/UI/UX」についてお届けする。
ブラウザを利用することでVR製作のハードルを下げる
Psychic VR Labのクリエイティブ・ディレクターとして、全体のアートディレクションなどを担当しているGod Scorpion氏。同社がメインで行っているサービスは、『STYLY』というVRのクリエイティブのプラットフォームだ。
UnityやUnreal Engineといったものを利用してVRコンテンツを作ることが多いと思うが、なかなかハードルが高い。そこでこの『STYLY』では、ウェブブラウザをベースに空間上を編集して見ることができるようにしている。
また、『NEWVIEW』というプロジェクトも行っている。VRが出てきたことで3次元空間の中でのクリエイティブやアート、ものごとを作るということが増えてきている。動画ならYouTubeなどのプラットフォームがあるが、VRではそうしたものにあたるプラットフォームは見つからない。そこでこの「NEWVIEW」では、3次元空間をユーザーやクリエイターが作って見られるためのプラットフォームを目指しているそうだ。
VRを作るとなると対するハードルが高く感じてしまう人が多いが、それをブラウザ上で行えるようにすることでハードルを下げて、ユーザーが作りたいと思う物が作れるようなプラットフォームにしている。
超能力者になりたい社長と意気投合
元々精神科医になろうと医学部に通っていたという、God Scorpion氏。現在の社長に4年前に出会ったそうだが、「超能力者になりたい」というやや変わった人物だった。その頃God Scorpion氏自身は、文化庁のメディア芸術祭用に「テクノロジーマジック」をテーマにした作品『Stricker』などを作っており、そこでお互い意気投合してPsychic VR Labという会社が誕生している。
当時は「VRは何が出来るの?」という時代であったため、R&Dやメディアアート的な枠組みの中で活動を初期の頃は行っていた。まわりにファッションブランド業界に人たちがいて、その彼らがやりたいことを実現するためにVRとファッションを結びつけるという活動を始めている。
その中のひとつとして、ファッションブランドのchlomaと協力し、『Microsoft HoloLens』向けのアプリ『chloma x STYLY HMD collection』を製作している。ショッピングは実際の店舗に行ったりEコマースで購入したりというものだが、それがMRのなかでちゃんと購入できるようにしようと作られたものだ。このアプリは、Storeでも配信されており購入まで完了することができるようになっている。
MRで未来はどのように変わるのか?
今後各社から、様々なスタイルのMRデバイスが登場してくる予定だが、ではMRによって未来はどのように変わるのだろうか?
将来的には日常的に身につけるような時代がいつかくるという中で、視覚に相当する部分をヘッドマウントディスプレイが補うのが当たり前となってくる。
そこで、実際に視覚情報をコンピューター側でどのように補助輪のように考えてあげるのかということを考えていかなくてはならない。3次元空間的な考え方これから必要となってくるのだ。
MRが当たり前になった時代とは、どんな感じなのだろうか。Leap Motionでクリエイティブ・ディレクターを務めるKeiichi Matsuda氏が、2016年に『HYPER-REALITY』という映像作品を発表しているが、この動画を見ることで未来の世界がイメージしやすいかもしれない。
MRには3つのレイヤーがある。「Background」は、外側の景色に当たる部分だ。MRが登場することで、自分の半径50cmの領域である「Foreground」と、それによって表示される「Midground」を考えていかなくてはならないのだ。
今ならインタラクティブなものやサービスが多いが、MRではオブジェクト側か自分に近づいてくれるようになるという。例えば本を開いたときに、内容を先に出してくれるといった感じで、もの側がユーザーに対してインタラクティブがくるようになるのである。
またMRでは、現実をベースに物事を考えていくことになる。現実空間で我々の欲望にはなにがあるのかというところを、ちゃんと考えていかなくてはならないとGod Scorpion氏はいう。
そうした心のみの中に「黒子から学ぶMR UI」というリサーチを行っている。これはひとりがヘッドマウントディスプレイを付けて、その横に黒子がふたりいて、歩いているときに「お腹が空いた」というと『食べログ』を出すといった感じで、超高度に発展したMR世界を実際にフィールドワークする形で取り組んでみようとしている。
また、先ほども出てきたKeiichi Matsuda氏の『HYPER-REALITY』の世界を、リバースエンジニアリングではないがハッカソンという形でプロトタイピングを行おうとしている。
また、現時点では未確定だが3次元空間の中で生きていてどういったものが欲望としてベースにあるのか、またはデザインとして考えていけばいいのかというディスカッションも構想しているという。
Psychic VR Labでは、『STYLY』というプラットフォームとクリエイティブツールを提供しているが、1回書いたコードをプログラミングしたくないのが普通だ。また、型としてあるようなものを誰にでも使えるようにするというのが、このサービスの目的でもある。それを、MRでは、組み込んでいくような形にすることを考えているそうだ。
Photo&Words 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑紙の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。