2018
07.02

【World MR News】時空間情報を量子レベルで遠隔共有するMRソリューション『QuantuMR』を東京電力と共同開発――「第8回VRビジネスフォーラム」レポートその②

World MR News

6月22日に東京・恵比寿のフェローズでMixed Reality開発先進企業によるセミナー「第8回VRビジネスフォーラム」が行われた。

本稿ではその中から、第1部に行われたポケット・クエリーズ 代表取締役 佐々木宣彦氏による、「QuantuMR(クァンタムアール)時空間情報を量子レベルで遠隔共有するMixed Reality ソリューション」についてお届けする。

▲ポケット・クエリーズ 代表取締役 佐々木宣彦氏。

MRで現場と遠隔地で作業と空間を共有できるソリューション『QuantuMR』

「ゲームが持つ力を実用ソリューションに展開したい」という思いで活動している、ポケット・クエリーズ。マイクロソフトのMixed Reality開発認パートナーとして認定されたほか、東京電力と共同で『Microsoft HoloLens』を実務的に使うという研究活動をすすめている。

この東京電力とすすめている共同研究は、自社のソリューションとして『QuantuMR(クァンタムアール)』と名付けている。今後はソフトウェアパッケージとして仕上げていき、外販も行っていく予定だ。

遠隔でPCのアプリケーションと『Microsoft HoloLens』を両方を使用。発電所の設備点検では、遠隔側にいる人がPCを使用する。PC側は『Microsoft HoloLens』で空間スキャンしたものを、簡単にボクセル化を行い、PCでゲームの操作を行うような感覚で現場の中を移動することができる。

現場で点検を行う人は『Microsoft HoloLens』を装着し、MRで表示される様々な情報を見ながら作業を行うことができる。現場の特定の場所を指定したり共有したりできることも簡単に行える。以前までなら「もう少し右上です」など、映像を見て口頭で指示をしながら場所を確認していくといった作業が必要だったが、MRならば直接どの部分なのかわかりやすく表示することができるためだ。

また、現場でセンサーの情報も直接読み取ることができるのも『QuantuMR』の特徴だ。こちらも従来までは電話などでやりとしなければならなかったが、そうした無駄な時間を割く必要もなくなる。

佐々木氏によると、今後はこのような部分をもっと拡張していこうと考えているそうだ。

たとえば音や画像解析で昔の景色と比較を行い、劣化している部分にアラートを出すほか、音を波形データ化しておき、現在の音と比較して雑音が入っていないかチェックできるようにするといった機能なども追加していく予定である。

また、作業結果を記録して書類を作成することもできる。蓄積されたデータが、次回点検を行う際に不具合の発見に繋がるように、ずっと毎日使い続けられるソリューションとして、実務的に使えるようにするにはどうすればいいのか研究を行っているとのこと。

ソフトウェア部分以外にも、他社製ではあるが『Microsoft HoloLens』が装着可能なヘルメットを使用し、1日中被っていることはできるのかといった検証も行っている。6月後半からは、実際の変電所で実務的に使用されている。

MRを活用した将来像のコンセプトを共有し共同開発

今回の取り組みは5月17日に発表されたものだが、そもそもなんのためにこうした取り組みを行うことになったのだろうか。

東京電力の場合、ベテラン作業員でなければ現場で不具合が発見しにくいという課題がある。そうしたものには、長年培ってきた経験や考え方などが重要だからだ。

別のたとえでいうと、音の変化や温度がいつもより高いなど複合的な状況をみて、現場で謎解きゲームをするような感じに近いのである。そうしたベテランの作業員は年々減ってきているのだ。

また、とにかく1秒でもこれまでやってきた作業時間を短くしようとしたり、ふたりでやっていた作業をひとりにしたりといった「カイゼン活動」を行っている中で、MRを使用した業務効率化をしたいと考えていたそうだ。

ポケット・クエリーズでは、「Mixed Reality技術で働き方に『革命』を」をキーワードしている。その中で『Microsoft HoloLens』が1強だと考えつつも、まだデモ的なものであったり実証実験中だったりといったものが多いというのが現状だ。

その中で、本当の意味で実務的に使用できる・産業に適用するものことをやっていこうとした場合、自分たちだけの力ではできない。そこで、実際に業務を行っている会社と協力する必要があることから、お互いのニーズがマッチして今回の共同研究開発がスタートしている。

『アイアンマン』に出てくるインターフェイスのような遊び心も取り込んでいく

今回のセミナーと同タイミングで開催されていた「3D&バーチャル リアリティ展」にも、この『QuantuMR』が出展されており、テレビメディアを含めて大きな注目を集めていた。また、こちらの展示では先ほどのコンセプトムービーよりも、より具体的な体験も行えるようになっていた。

たとえば手を目の前に出すことで、ウインドウメニューが表示できるようになっている。映画『アイアンマン』などにも出てきそうなインターフェイスだが、元々ゲームを作っている会社ということもあり、未来を実現するような遊び心のある機能も盛り込まれているそうだ。

いいところばかりだと思われがちなMRだが、実際に実験を行っていくことでそれまで見えていなかった課題もわかってきた。たとえば東京電力のソリューションでは、実際の発電機器に様々な情報が見られるようにしている。

しかし、その現場はかなり広大なスペースになっており、大きなタービンが何基も並んでいる。そうしたときに、200メートル前にあったデータを見たいと思っても、そこまで実際に走っていかなくてはならない。狭い範囲内ではMRならではの良い部分は見えやすいが、その逆の考え方もあるのだと気付いたそうだ。

そこで別の考え方もマージしていこうということで、空間全体のミニチュアを画面内に表示し、特定の部分を触ることでデータが表示できるようにすればいいのではないかと考えたという。

こうした細かい使い心地をどんどんあげていき、実際に実装して試してみて使えるかどうかというところを現在は検証している段階である。

「3D&バーチャル リアリティ展」のために新たな機能も追加した。PCの中に手を追加して、どこを指さしているか視覚的にわかるようにしている。

現在は『Microsoft HoloLens』とPCアプリケーション、『WindowsMR』の3つの環境で同時に作業を行えるようにしている。今後は、タブレット版やPCブラウザのみで使えるようにしていく予定だ。『Microsoft HoloLens』自体は高価なため、若干機能は落ちても使える仕組みをどんどん広げていくとのこと。

Photo&Words 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑紙の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。