05.30
【World MR News】シンガポールのVR/MRスクールレッスン
シンガポールのSmart Nation(シンガポール政府が掲げているビジョンで、人材確保、育成、産業集積を進め、アジア地域における“Digital Harbour”となるべく経済発展につなげようという考えの取り組み)が推進しているプロジェクトの一環で、VR/MR等の新興テクノロジーを活用したソリューションやパートナーシップの構築が始まっており、そのスピードが加速してきている。
5月23日~25日にシンガポールで開催された「CommunicAsia 2017」でも、VR/MR関連の多くのトレーニング、ヘルスケア等についての取り組みが展示された。「CommunicAsia」は、東南アジアや中東の通信関連企業が多く集まる大規模な展示イベント。シンガポールという限られた面積の土地に多民族が共存し合う都市ならではのソーシングを生かしたイベントだ。
VR/MRの分野では、医学生の訓練用に構築されたシステムが展示されており、これらのシステムはシンガポールで最大規模の総合病院 Tan Tock Seng Hospital(TTSH)と協力し、アニメーション・視覚効果の制作会社であるSideFX Studiosによって制作された。このソリューションのグラフィックとインタフェースは、一般的なx86マシン上で動作するUnityゲームエンジン上に構築されている。今後もこの医療分野におけるVRテクノロジーを使用したシュミレーションプログラムは、世界各国の流れ同様に大幅に増えていくという。
またシンガポールでは、VR/MR技術の活用は、ビジネスや専門家用だけではなく、既に小学校の子どもたちの教育にもパイロット版の導入が始まっている。地方の独立プロダクションハウスであるBeach House Studiosとシンガポール教育省との協力により、これまでの過去4ヶ月間で、シンガポールの農業や歴史的建造物などについてのトピックスなど、3時間分のMR授業が行われた。これらの授業は、Samsung Galaxy S7とGear VRヘッドセットによるもので、生徒たちは9-11歳の子どもたちであることから、ヘッドセット着用時間を極力最小限・短時間に抑えたもので構成されている。
科学、数学、読解力の分野で国際学力レベルが世界第1位(OECDが行っている世界の15歳児童を対象にした学力調査:2015年度時点)のシンガポールだけに、教育分野においての最先端技術の導入も、対象となる子どもたちの年齢がアメリカや日本など他の国と比較して非常に若い。人材面でも、ハード面においても、今あるリソース、技術を活用し、実社会へ活かしてみるというスタンスが、教育における新テクノロジーの世界展開へ向けてのモデルとなっていくであろう。