04.10
【World MR News】世界最大級のコンベンション「MIPTV2017」でのMRの展望について
フランス・カンヌで毎年開催されるTV/デジタルコンテンツの大規模な祭典「MIPTV2017」におけるパネルセッションにて、これからのMRの展望についてのパネルディスカッションが開催された。MIPTVは、主にその年の世界各国のテレビ番組の見本市、お披露目市として開催され、世界中のテレビ局のバイヤーたちが集まり、最先端の映像コンテンツを探すための一つの大きな場となっているが、近年はスマホやゲーム機器の普及によるコンテンツのIP事業展開により、最先端の技術者やクリエイターたちも多く参加している。
3DアニメーションフィルムやVR/ARゲームなど制作するNexus Studiosのインタラクティブアートの代表者であるルーク・リッチー氏は、「現実の世界と仮想世界の要素が交錯するMRについて、一般大衆に向けたマスの市場で浸透するには、まだ準備ができていないが、そこには莫大なチャンスがあると思っています。最近発表されたMicrosoft HoloLensのような製品は、まだまだ限られものであり、複合現実感の中に存在できるのだというストーリー体験を明らかにさせること、そのために未来を見据えることが必要である」と述べた。
また、「MRに要する技術は、人々に感情的なストーリーを伝えるために、現在のヴァーチャルリアリティよりもポテンシャルを秘めています。MRでは、私達が持っていない感覚を加えられ、一方VRは、視覚、音楽ともに“やり過ぎ”であり、私達からある意味で感覚を取り去っています。」と、現状のMRとVRの違いについて話し、さらに「ポケモンGO」にも触れ、「ポケモンGO」の人気によって、現実のイメージに仮想要素を加える複合現実の前のステップであるAR(拡張現実感)というものが世の中で強調されたことについても語った。
また、HoloLens / UX / UIの技術伝道者、ミシェル・ルソー氏は、当初Microsoftがビジネスや学術分野のアプリケーションでHoloLensを開始することを目標にしていたが、デバイスが手頃な価格になり、消費者を巻き込むコンテンツが出現するにつれて普及率が上昇する可能性があると付け加えた。マスマーケットにリーチするには、さらに経験を積み、Microsoft社はパートナーと協力して近い将来HoloLensの技術をVRヘルメットに導入する計画を立てているということだ。そしてルソー氏は、究極は、スクリーンが全くない世界であり、仮想スクリーンしか存在しない世界であると語っている。
AR技術会社であるBlipparの消費者マーケティング担当責任者であるRanj Bath氏は、MRが近い将来マスマーケットの命題になる見通しについて、より強気の発言をしている。iPhone8がMRを搭載するとの噂も出回っていることから、「マーケットの動きは急速に進みます。一夜にして1600万台のMRデバイスを市場に出すことができるのですから。」と語った。
また、その一方で、Bath氏はMRの欠点についてもあげている。MRが深刻なプライバシー問題を引き起こす可能性があると警告し、「ユーザーの複合現実空間に侵入する者が現れ、あなたの世界をハッキングする可能性があります」と述べた。
これからの期待が高まるMRの世界。当然ながら色々な問題は起きるであろう。私達はMRの便利なデバイスを身に付けると同時に、「監視状態」への世界へも歩き出しているのかもしれない。
「MIPTV2017」公式サイト
http://www.miptv.com/
Speakers情報
http://www.my-mip.com/en/Sessions/37024/HOW-MIXED-REALITY-MAY-BRING-AR-MAINSTREAM-AND-WHY-IT-MATTERS
Photo:MIPTV2017