2020
07.10

【World MR News】コロナ前と後で大きく変化したXRへの価値観――「XRニーズの高まりからみるユーザーインサイトとデジタル技術の関係」イベントレポート

World MR News

TECH PLAYEは、6月17日に「ユーザーインサイトとデジタル技術の関係」をテーマに、ZOZOテクノロジーズの諸星一行氏とSynamonの武井勇樹氏を招き、トークセッションをオンライン上で開催した。こちらでは、その模様を抜粋してお届けする。

テレワークの普及でアパレル業界ではトップスの売り上げた良かった

――XRに限らず、コロナによって生まれた変化とは?

諸星氏:在宅で作業する方が多くなり、自宅での環境を整えた人が多いのではないかと思っています。個人的に観測している範囲では、AKRacingというゲーミングチェアや大きなディスプレイを購入された方もいました。

ウェブカメラなども売り切れたことから、一般の一眼レフカメラをウェブカメラにするAPIにするドライバーが出るといったこともありました。みんながそれをやらなければいけない状況になった結果、クォリティの差がこれまでよりも大きく出るようになりました。

武井氏:仕事環境周りでは大きく変わっていませんが、会社からコロナ対策給付金のようなものが出て、各自で自宅の環境を整えてくださいということはありましたね。

諸星氏:回線環境が、太いか細いかでも変わってくるんじゃないかなと思っています。今後XRで・・・・・・といっても、回線がないとコミュニケーションが行えません。そのため、回線が細い会社では厳しくなっていきます。この辺は、いくらXRの技術が進化したとしても、どうしようもない部分ではあります。

私が接しているアパレル業界は、結構大変な状況になっています。続けるのが厳しいブランドさんでは、店舗を減らすという事態も発生しています。ポジティブな面では、バーチャルファッションショーや、Nintendo Switchの『あつまれ どうぶつの森』の服をデザインする機能を利用して、ブランドさんが着せ替え機能を提供するという流れもありました。

ファション業界では、ほかにもトップスの売れ行きが良くボトムスはそんなに伸びていないという現象が起きています。これは、オンライン会議をやるときに上だけ写るため買っておこうという流れからきています。下は逆に、スウェットやパジャマが売れています。

▲ZOZOテクノロジーズの諸星一行氏。

武井氏:そもそもテレワークをやっていこうとなったときに、以前はZoomも導入していないけどVR会議はできないかという問い合わせが結構ありました。僕らとしては、「まずはZoomじゃないですか?」とお話しすることが多かったんです。そのデジタルシフトが一気に進んだなという感覚があります。

Zoomは、テクノロジー界隈の人たちの間では普通に使われていましたが、こんなに一気に覇権を取り、XR関係なく働き方デジタルシフトしたなということを顕著に感じます。

▲Synamonの武井勇樹氏。

急速なオンライン化でバーチャルサービスに注目が集まった

――コロナによって、どんなXRニーズが生まれた?

武井氏:弊社が提供しているサービスは、VRで会議を開いたりブレインストーミングをしたり、現地視察のような使い方をしたり展示会を行ったり、ジョブトレーニングに使用したりと、様々な使い方ができるサービスを提供しています。

コロナ前後で比較すると、問い合わせ自体が約3倍になり「VR会議」や「バーチャルオフィス」というキーワードの検索数も増えています。メディアの取材も増えており、そうしたことからも問い合わせが増えています。

コロナショックで我々からみてどんな問い合わせの変化があったかというと、以前は働き方改革でVR会議をやりたいというものや、新規事業開拓やイノベーションの文脈でVRを活用したいというような、未来に対する投資というものが多かったです。

しかし、コロナ後では現実のバーチャル化ということで、元々リアルで実施していたものをバーチャル化したいという問い合わせが、非常に増えています。リアルで行っていたセミナーをバーチャルで開催したいというものや、商談を含む展示会や教育、研修・ワークショップをしたいという問い合わせが増えました。

最近我々も、VRとバーチャルを区別するようになりました。これはコンテンツを作る側と見る側のふたつの軸でマッピングしたものになります。コンテンツを作るのが2Dなのか3Dなのかという縦軸と、見る側がPCやスマホの2Dの画面か3Dビューワーで見るのかというのが横軸になります。

これまで我々が提供していたものは、右上の3Dで見るサービスです。しかし、最近はコロナの影響であまりにも急激にオンライン化が進んだ結果、バーチャルサービスのようなところに注目が集まるようになりました。

ゲームでいうと『フォートナイト』や『あつまれ どうぶつの森』などが、コンシューマーでも盛り上がっていますし、ビジネスシーンでもこうしたものが使えないのかという意見が増えています。

コロナ後はVTuberになりたい人が増えた?

――今後どのように価値観がアップデートされ、私たちはどのように向き合っていったら良いのか?

諸星氏:このままテレワークが当たり前になるのか、元に戻ってしまうのか。このあたりも価値観のアップデートだと思います。ここはハンコ文化にも通ずるものがあります。大手はハンコを廃止しています。印鑑の代わりに使われる「クラウドサイン」が延びているという状況に繋がっています。物理的な制約に縛られていたものが不要になるということが、ひとつあります。

我々が押しているXRの空間は、ハンコのような物理的なものは持って行くことができません。そのあたりをどうすればいいのかというのも、課題としてあります。

武井氏:コロナ前から言っていることですが、VRが現実を代替するものだと捉えている方がいますが、しかし我々は現実のリプレイスだとは考えていません。どちらかというと、リアルとオンラインとバーチャルというように、第3の選択肢としてVRやバーチャルが出てくるといいのではないかと思っています。

昔インターネットが普及し始めた頃に、リアルはいらなくなるのではないかという意見もありましたが、現実はそうはなっておらずオンラインが便利なものはオンラインで、リアルの方がいいものはリアルでという棲み分けができています。それと同じように、VRやバーチャルがこういう場面で使うといいよねという認識が広まっていくと、選択肢がだんだん増えていきます。

諸星氏:重要なのは手段が増えたと言うことですね。そもそもXRは手段であって目的ではありません。今我々は、この世に生まれた肉体という姿で会話をしていますが、VTuberなどのバーチャルタレントなどの登場もあり、今後は姿や見た目に関する価値観も変わっていくと思っています。

今は、VTuberのようなかわいいアバターは誰でも作ることができるようになりました。それでスマホで配信をするなど、ネット上で別の人格を持つことができます。やりたいかやりたくないかは別にして、コロナの影響からそうした人が増えているのかというレポートをVTuverのねむさんが公開しています。その結果によると、増えていることがわかりました。

これまでは、かわいいキャラクターはビジネスの場では嫌煙されてきました。そのあたりも、だんだん意識が変わっていくのかなと思っています。

 

  • How has COVID19 influenced people to become virtual characters? / COVID19はいかに人々をバーチャルキャラクターにいざなったのか?|ねむ⚡バーチャル美少女YouTuber|note

https://note.com/nemchan_nel/n/n37138daa9fb7

武井氏:うちも、アバター自体はデフォルメされたキャラクターを使用しています。もっとリアルに寄せることはできないのですか? という話しもされますが、リアルに寄せると恐くなってしまいます。表情のトラッキングがまだ取れないので、真顔のキャラクターがバーチャル空間にいると恐く感じます。また、スーツを着たキャラクターはほかのバーチャルサービスであまり見たことがありません。

人の価値観は面白くて、今は16種類ぐらいの中からアバターを選ぶようになっているのですが、自分のアバターはこれというようなものがあって、毎回それを選ばないともやっとしてしまいます。感覚的には、毎回ゲームで同じキャラクターを選ぶのに近い感覚なのかもしれません。

諸星氏:ツイッターも、アイコンでその人を認識しているイメージがありますね。

武井氏:ツイッターだと複数アカウント持つことがありますが、アバターによって違う人格になるということもだんだん増えていくかもしれません。

諸星氏:オンラインでのコミュニケーションが増えてきて、アバターでの姿でやりとりできる状態になってきているので、だんだんそういう考え方もあるということが認識されて行くフェーズなのかなと思っています。

PhotoWords 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑誌の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。