2019
02.14

【World MR News】外国人比率が高く多様性に富んだ会場となった、Global Game Jam2019 ヒューマンアカデミー秋葉原校会場レポート

World MR News

全世界で約47,000人が参加

1月25日から27日まで開催されたGlobal Game Jam 2019。ギネスブックにも認定された、世界最大のゲーム開発のお祭りだ。2019年度は全世界で約47,000人が参加し、世界113カ国・地域で860箇所の会場がエントリー。統一テーマ「WHAT HOME MEANS TO YOU(あなたにとって「ホーム」が意味するもの)をもとに、3日間で約9,000本にも及ぶゲームが開発された。筆者が運営責任者をつとめたヒューマンアカデミー秋葉原校会場でも36名が参加し、6本のゲームが制作された。

企画発表

中間発表

最終発表

チーム1『Nemo’s Guardian』

魔弾を発射する特殊能力をもったイソギンチャクの子どもが、広大な海底で迷子になったクマノミととも共に自分の居場所を探していくアクションシューティング。プレイヤーはイソギンチャクを前後左右に移動しつつ、迫り来る外敵に対して魔弾を発射して撃退できる。敵を倒すと経験値が得られ、パワーアップもできる。

チーム2『Psycho Mothers -サイコマザー-』

「人類みんな家族」をテーマに掲げた、いささかブラックなアクションゲーム。プレイヤーは「おかあさん」となって、制限時間内に広場からできるだけたくさんの「子ども」を家に連れて帰ることが目的。ゲーム中に出現するさまざまなアイテムでほか他の「おかあさん」の邪魔もできる。ゲームパッドでの操作に対応しており、最大4人対戦で楽しめる。

チーム3『Global Santa Claus “Santa’s Gift“』

全世界の子ども達に夢とプレゼントを与えるサンタクロース。プレイヤーは、そんなサンタクロースが営む夢屋「Santa’s」の店長となり、常連客の好むプレゼントを提供して、居心地の良い空間をつく作ることが目的。適切にプレゼントを与えていくと、お店が常連客でにぎわっていく。1人だけでなく2人対戦も楽しめる。

チーム4『Son vs Mama』

主人公はゲーム好きの子どもで、自室で母親の目を盗みながらゲームを遊んでいく。ゲームを遊んでいる姿を母親に見つかるとAngerゲージがたまり、ゲームを遊ばないでいるとFunゲージが下がって、どちらもゲームオーバーに一直線。ステージクリアごとに母親の数が増えるなか中、いかにバランスを保ち続けられるかがポイントだ。

チーム5『Home.io』

オンラインマルチプレイヤーゲームで、ほか他のプレイヤーの攻撃から身を守りつつ、食料を食べて体力を保ち、できるだけ長時間生き続けるゲーム。時間経過とともに年齢が加算されていき、体力が減る速度もアップする。マップ上に点在する家に到着すると世代交替が発生し、自分の年齢を若返らせることが可能だ。

チーム6『Find the Game』

ゲーム嫌いの家庭に生まれ育った少年が、深夜に布団の中で遊ぶために、家の中に隠されたゲーム機を探し出すステルスゲーム。プレイヤーは「ぼうずちゃん」を操作して、母親が隠したゲームボーイを探し出し、自室に無事戻れればクリアだ。母親は足音に敏感なので、うまく隠れたり、やり過すごしたりしながら、進んでいく。

多様性に富んだヒューマンアカデミー秋葉原校会場

Global Game Jamは2009年に国際ゲーム開発者協会(IGDA)教育SIGの主催でスタートし、2013年に非営利団体Global Game Jamに運営が移管された。当初から一貫して「Innovation, Experimentation, Collaboration(革新性、実験性、協調性)」をモットーとしており、競争ではなく教育的効果が掲げられている。経歴もスキルもバラバラの参加者が一堂に会し、ジャズセッションのような即興開発を短期間で集中して行うことで、ゲーム開発に必要な暗黙知が効率良く得られるというわけだ。

もっとも日本では類似したイベントがなかったことと、1月末という開催時期が入試と重なるために、大学での開催が難しいという問題があった。かわって受け皿になってきたのがゲーム系の専門学校だ。もっとも、今年度は新たな動きがあった。国内19会場のうち、コワーキングスペースなど商業施設での開催が7会場にのぼり、最大勢力となったのだ(以下、専門学校6会場、大学3会場、ゲーム会社3会場)。Global Game Jamの認知が徐々に広がってきたといえそうだ。

ヒューマンアカデミー秋葉原校会場においても、興味深い現象が見られた。第一に参加者の属性的に、社会人が19名、学生が17名と丁度良いバランスになったこと。その上で学生のうちゲーム系の専門学校が9名、一般の大学生が8名にのぼったことだ。参加動機を尋ねたところ、「学校でゲーム開発を習っているわけではないが、デザインやプログラミングを行っており、ゲーム業界に興味があった」などの回答が聞かれた。就職活動の一環として、業界とのきっかけづくりを目的に参加した学生も多かったようだ。

一方で開発されたゲームはすべてPCベースで、VRなど特殊なデバイスを用いたゲームは存在しなかった。これについてはCRI・ミドルウェア会場や電子デバイス会場など、尖ったハードウェア向けのゲーム開発をテーマに掲げた会場が設立されたことで、そうしたゲーム開発を望む層がそちらに流れたことが原因と言えそうだ。他に外国人参加者が10名と全体の28%に及んだ点も特徴で、日本語と英語がとびかう国際色豊かな開発風景がみられた。中には日本旅行のついでに参加したという猛者もみられたほどだ。

ゲーム開発の学問化はコンピュータサイエンスとコンピュータグラフィックスの両分野から始まり、2000年代に入るとゲームデザインの分野でも始まった。しかし、世界的にも道半ばで、特に日本では学問化が遅れていることもあり、「習うより慣れろ」の傾向が強い。だからこそGlobal Game Jamのようにプロとアマチュアが一緒になってゲームを作る機会は、学生にとって重要だ。一方で外国人と一緒にゲームを開発する経験はプロにとっても新鮮で、その意味でも教育的効果の高い会場となったといえそうだ。

Photo&Words 小野憲史

「ゲーム批評」編集長などを経て2000年よりフリーランス。

ゲームジャーナリストとして国内外のイベント取材・ゲームレビュー・講演などを手がける。他にNPO法人IGDA日本事務局長、ゲームライターコミュニティ代表、東京ネットウエイブ非常勤講師。