05.31
【World MR News】[de:code 2018] 「Microsoft HoloLens」を活用した最新のサービスが一同集結!――MRアプリ体験会をレポート
マイクロソフトが主催する、ITエンジニアのためのイベント「de:code 2018」が、5月22日~23日に、東京・港区のザ・プリンス パークタワー東京で開催。同イベントではセッションのほか、「Microsoft HoloLens」を活用した体験ブースの出展が行われていた。
イベント開催に先駆けて、前日の5月21日にメディア向けのMRアプリ体験会が実施された。こちらでは、その模様をお届けする。
今回はあまり時間が取れないということで、各社9分ほどで回るという強行スケジュールだった。そのためほんのさわり程度の体験となってしまったが、いずれも革新的でMixed Realityの未来を感じさせるものばかりであった。
株式会社ホロラボ:映画「キングスマン」を彷彿とさせる遠隔会議システム「Mixed Reality for Office Communication」
オフィス空間のプロであるイトーキと、ホロラボが共同で開発したのが、その場にいない人たちと「Microsoft HoloLens」を利用してコミュニケーションが行える「Mixed Reality for Office Communication」だ。
遠隔参加者は「Kinect」を通じて映像と音声をリアルタイムで通信。その姿と声を「Microsoft HoloLens」でバーチャル映像として表示しながら、会議を行うことができる。
映画「キングスマン」の中に、誰もいない会議室でグラスをかけると遠隔の参加者の映像が表示されるというシーンがあったが、まさにそれをリアルに実現化したかのようなサービスである。
■株式会社積木製作:MRで清水建設のプロジェクトを具現化した「シミズドリームホロビューア」&VRで高所から落下する事故の危険性が学べる「安全体感VRトレーニング」
同社のブースでは、清水建設のプロジェクト「シミズ・ドリーム」を、MR技術を活用して実現した「シミズドリームホロビューア」と、建設現場の安全教育に使用される「安全体感VRトレーニング」のふたつのコンテンツを体験することができた。
「シミズドリームホロビューア」では、「Microsoft HoloLens」をかけて最初の操作方法を学び、次に建造物を1/1のスケール感で体験することができる。
「安全体感VRトレーニング」は、建設現場で高所から墜落する体験をVRでできるというもの。これにより、どこに注意を払うべきだったかということを学ぶことができる。ブースで展示は行われていなかったが、同社ではこのほか鉄道メンテナンス時に線路上の確認を怠ってしまったために電車に引かれてしまうというものもリリースしている。
また、6月には感電事故、挟まれる事故、屋内の建設現場での事故といったシリーズもリリースする予定だ。
■博報堂&博報堂プロダクツ:国宝「風神雷神図屏風」の魅力をMRで拡張!
「Microsoft HoloLens」を使い、展示ペースに設置された「風神雷神図屏風」とMRで融合した映像や音声が楽しめるというコンテンツが体験できた。コンテンツが始まると、すぐ近くにお坊さんの姿が現れ、絵についての説明をしてくれる。
屏風の周りに大宇宙の空間が広がり、指でアクションをすることでワイヤーフレームの蝶が飛び出すといった、エンターテイメント的な演出も盛り込まれていた。
■株式会社ネクストスケープ:AIエンジン「COTOHA」が人の代わりにサポート
ネクストスケープのブースでは、NTTコミュニケーションズと協力して開発した、「COTOHA」という日本語の対話型AIエンジンが出展されていた。
これは「Microsoft HoloLens」を使って、「COTOHA」側のエキスパートエージェントと対話しながら、問題を解決できるというもの。今回は、IoTと連動した複合機に不具合があったときに、会話をしながら不具合のある場所を特定しその対処方法を指示してくれるというデモの体験を行うことができた。
「COTOHA」とのやりとりはカンペを見ながらではあったが、ある程度違う言い回しをしても会話は通じるとのこと。
■株式会社南国ソフト:ヴァーチャル空間の物体に触れる感覚が体験出来る「ほろふれる」
ヴァーチャルリアリティの世界では、人間の五感も重要な要素となってくるが、そのなかのひとつである「触覚」に注力したのが、南国ソフトのブースで展示されていた「ほろふれる」だ。
指先に専用のデバイスを装着し、「Microsoft HoloLens」で映し出される砂やヒトデ、スイカといった触覚がことなる物体を実際につまんでその感覚を体験することができる。今後、手袋などその応用が進めばもうひとりのVRデバイスとして重要なものとなってくるかもしれない。
■株式会社ハニカムラボ:2Dと3Dの世界をAIキャラクターが行き来する
AIキャラクター「ハニカAI」と15分間会話をしながら、ストーリーが楽しめるというユニークなコンテンツを展示していたのは、ハニカムラボのブースだ。
「ハニカAI」はアメリカにいて、彼女が作ったシステムプロトタイプ1号で接続しているという設定である。最初は画面に映し出された2Dのキャラクターと会話をしていくのだが、そこで利用されているのはAzure Cognitive Servicesだ。
第2段階では、「ハニカAI」と「Microsoft HoloLens」を通してコミュニケーションができるようになる。すると立体的に飛び出してきた「ハニカAI」とコミュニケーションが行えるようになるのだ。
キャラクターが2次元と3次元を行き来するという発想も面白く、バーチャルYouTuberなどとの相性も良さそうなシステムである。
■株式会社ポケット・クエリーズ:「Microsoft HoloLens」を介して現場と本部の環境を繋ぐMRソリューション「QuantuMR」
ポケット・クエリーズのブースでは、東京電力と共同開発を進めるMRソリューション「QuantuMR(クァンタム アール)」が出展されていた。
この「QuantuMR」は、ビルのメンテナンスなどを想定したときに、現場と本部の環境を「Microsoft HoloLens」を使って共有できるというソリューションだ。展示ブースでは、ビルのメンテナンス情報を視覚化したものを、MRで体験することができた。
実際の作業現場に重ねる形で情報が表示されるため、直感的にわかりやすくなっている。また、耳で聞くだけではチェックがしにくい音の状況も視覚化。波形画像を見比べることで、正常化どうかの判断をすることもできる。
さらに過去のメンテナンス状況をバーチャルのアバターとして表示することができ、どのような部分を点検したのかという確認もできるようになっている。ひと通りメンテナンスが終わったら報告書を手のジェスチャーで書き、それを本部と共有することも可能だ。
「Microsoft HoloLens」を介して現場と連携していることの強みはほかにもある。たとえば、緊急対応が必要な事態が起きたときに直接行かなければならない場所をマーカーを設定して指示することができるようになっている。
このように、ルーチンワークになりがちなメンテナンスに関しては、特別な技術を持った人物がその場にいなくてもこの「QuantuMR」を使うことで管理することができるようになるのだ。
■日本マイクロソフト株式会社:オブジェクトの配置が確認できる「Layout」と遠隔サポートができる「Remote Assist」
日本マイクロソフトは、ふたつのブースを使用して「Microsoft Layout」と「Microsoft Remote Assist」という新しいサービスの展示を行っていた。
まずは「Microsoft Layout」。「Microsoft HoloLens」を利用して、部屋に様々な家具を設置してそのスケール感などを確認できるというものだ。メニューの中から配置したい家具を選択し、場所やサイズなどを調整して実際に確認することができる。
今回のデモではリビングを設置していくというものだったが、工場などで使われることを想定しているとのこと。
「Microsoft Remote Assist」は、その名の通り遠隔地にいるエンジニアに対して本部などのエキスパートから支援が受けられるという「Microsoft HoloLens」用のアプリだ。こちらのデモでは、「Microsoft HoloLens」を装着し、実際に指示を受けながら会場内に設置された配管の状態を確認し、正しい状態の画像を比較して間違っているところ直していくという作業を体験することができた。
これを利用すれば視覚的にわかりやすいため、ややこしくなってしまいがちな作業でも、こうしてエキスパートの指示を受けることで間違わずに実行することができるだろう。
■株式会社インフォマティクス:工事現場で図面を広げることなく情報が確認できる「GyroEye Holo(ジャイロアイ ホロ)」
インフォマティクスのブースで展示されていたのは、「Microsoft HoloLens」を活用した製品「GyroEye Holo(ジャイロアイ ホロ)」だ。
こちらは、工事現場で「Microsoft HoloLens」をかけることで、紙の図面を広げることなく、設計図面や情報、モデルを実際の現場に表示して作業が行えるというサービスだ。
また、遠隔支援機能も搭載されており、現場の状況を画像として共有し、エキスパートと相談しながら作業を進めるといったことも可能である。
ちなみに「Microsoft HoloLens」は専用のヘルメットに装着されているのだが、熱処理をするために前面にファンやヒートシンクなどが設置されていた。
■VR・AIを活用した電動車いすシステム「Telewheelchair」も展示
MRとは少し異なるが、介護者の負担軽減のための電動車いすシステム「Telewheelchair」も展示されていた。こちらには大きく分けて3つの機能が搭載されている。
ひとつは、VRで映像を見ながら操作できる「遠隔操作」機能。ふたつ目はAIで人物検知をして危ないときに緊急停止する「操作補助」機能。最後は、複数の車を連係操作できる「追従走行」だ。
「遠隔操作」は、まるでラジコンでも操るかのように車椅子を移動させることができる。やや慣れが必要だが、いろんな活用方法が考えられそうだ。
また「追従走行」だが、以外と複数の車椅子を介護者が動かすのは大変な作業だという。しかしこの機能では、前方の車椅子の背面に表示されているマーカーを読み取ることで追従してくれるため、同時に移動させたいというときに便利である。
Photo&Words 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑紙の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。