05.19
【World MR News】東京電力とポケクエ、MRを活用したソリューション「QuantuMR(クァンタムアール)」を共同で開発開始
東京電力ホールディングスとポケット・クエリーズは、発電所や工場等の第一戦現場の支援・高度化にMixed Reality(MR)を活用する研究を、5月17日より共同で開始すると発表。メディア向けに、共同記者説明会を東京電力ホールディングス本社館で実施した。
まず、東京電力ホールディングス株式会社 経営技術戦略研究所 経営戦略調査室 エネルギー経済グループの山川泰司氏より、今回の研究に関する説明が行われた。
「Mixed Reality」(以下MR)とは、複合現実と呼ばれる技術のことを指す。現実世界の空間と、3Dデジタルの仮想空間を重ね合わせて表示することができるのが特徴だ。
AR(Augmented Reality:拡張現実)との違いだが、ARの場合はマーカーを設置して、そこに3DCGを重ね合わせて表示させる必要がある。しかしMRではARマーカーが不要で、空間の形状を認識して位置を認識し、3DCGを重ねて表示させることができるのである。
また、手の動きも認識することができ、直感的に操作できるというのも特徴のひとつである。こうした技術は、建築現場や医療など、今後様々な分野で活用されることが期待される。このMRを実現するためのデバイス機器として、マイクロソフトの「ホロレンズ」を使用している。
電力業界は、電力の自由化や自然エネルギーの導入などにより、事業体系が大きく変わってきている。そうした事情を背景に、柔軟に適応して安定供給をしていくには、先を見据えた技術開発が必要だ。
東京電力ホールディングスは、様々なデータを可視化して活用することと、将来を見据えてMRを活用すること。そして、これまで自社で培ってきた経験を活用していきたいと考えている。
一方、ポケット・クエリーズは、ゲームに関する技術開発を従来から持っている。今回のMRについても、積極的な研究開発を行っている。また、MRを活用した働き方を変えていくといったビジョンも持っており、そこで両社のニーズがマッチしたそうだ。
今回の研究で得られた知見は、「QuantuMR(クァンタムアール)」と名付けられたソリューションとして開発が行われていく予定である。
発電所のような施設では、設備を監視するための機器がある。また、業務をこなすためのマニュアルやノウハウも、多数ある。状態の監視などは遠隔で行われたりもするが、実際に現場に行って点検をしたり、異常時の対応は人間の五感をフル活用して行われることが多い。
業務データは、通常パソコン等で集中管理されている。また、現場ではそこで得られるデータというものがある。現実の空間にいる人のデータと、集中管理しているデジタルデータを同時に見て活用することが、MRで実現できる。
実際に現場で発生しているデータを、その場で確認・管理することができれば、様々な現場でも新しい働き方ができると考えているという。この研究では、MRの技術を活用して、様々な現場業務を模擬して、その中で最適な活用方法を検証していく予定だ。
検証結果はMRのソフトウェアに反映し、実際に現場で試験をしながら実用化に向けた検討をしていく。将来的には、東京電力グループの発電所などの第一線現場への業務活用などに加えて、他産業にも展開できるように段階的に研究を行っていく。
展開計画としては、研究開発から始めて2018年中に模擬的な現場環境などをMRで構築。その中で、現場の業務をどう活かしていく機能が作れるかといった検証も行っていく。
2019年からは業務活用をしていき、2019年中~2020年度ぐらいにソリューションとして展開していきたいと考えている。
「QuantuMR」で見えない情報が見えるようになり遠隔のやりとりもスムーズに
続いて、株式会社ポケット・クエリーズ 代表取締役の佐々木宣彦氏が登壇。「QuantuMR」についての研究コンセプトが説明された。
「QuantuMR」は、今後パッケージソフトウェアのようなイメージでソリューション化し、業務提携を行っていくことを考えている。社内外問わず、大々的にアピールしながら活動も行っていく予定だ。
「QuantuMR」というネーミングは、「Quantum(量子、画期的な、飛躍的な)」という単語と「MR」を掛け合わせたものだ。マイクロソフトの「ホロレンズ」には、空間を3Dスキャンするような機能が備えられている。それに対して、今回のソリューションでは、様々なセンサーデータを場所に紐付けて管理を行う。そうしたことから、量子レベルで情報を管理するという意味合いで名付けられている。
「QuantuMR」は、「Query」「Quest」「Queuing」「Quick」「Quote」「Quantum」という、「Q」から始まる6つのキーワードを研究テーマにしている。これらのキーワードは、点検を行う流れである事前準備作業、点検作業実施、作業結果記録に沿ってなりたっている。
見えない情報が見えるようになり、離れた場所で同じ映像を共有しながら曖昧な言葉ではなく、実際のMR空間の中で的確に指示することができる。
今後は、「QuantuMR」の特設サイトで日々情報を発信していく。また、マイクロソフトが主催するイベント「de:code 2018」(5月22日~23日、ザ・プリンス パークタワー東京)で展示する予定だ。会場では10分ほどのデモが公開される予定である。
■QuantuMR特設サイト
http://quantu-mr.com/
■de:code 2018
https://www.microsoft.com/ja-jp/events/decode/2018/
Photo&Words 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑紙の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。