2020
08.04

【World MR News】Hubs/Spokeを使ったイベント設営のTIPS――「#VRSionUp!7『Hubs Study』」レポートその①

World MR News

GREE VR Studio Labは、7月15日に「VRライブエンタメの研究開発を通したイノベーションの発掘」をテーマにしたVR研究系ワークショップ「#VRSionUp!7「Hubs Study」を開催した。昨年7月に開催された「#VRSionUp!6」で、いったん幕を閉じた同イベント。約1年ぶりの開催となった今回は、WebVR『Hubs』の事例紹介を中心に、様々な登壇者を招いて実施された。

本稿ではその中から、とーやくん氏、ながみね氏、William Chan氏のセッションをピックアップしてご紹介していく。

「Spokeを使ったイベント設営TIPS」 by とーやくん氏

とーやくん氏からは、「Spokeを使ったイベント設営TIPS」というテーマでセッションが行われた。『Spoke』とは、Hubs専用のシーンエディタだ。Unityライクにオブジェクトを3D空間に設置することができる。それでありながら、ブラウザだけで動作するため、敷居が低いところも特徴のひとつだ。

『Spoke』と『ルーム(D&D)』ではメディアの対応状況が異なる。たとえばPDFは『ルーム』ならドラッグ&ドロップで大丈夫だが、『Spoke』では別のサーバにアップロードして直リンクを貼るという、特殊な手段を踏む必要がある。YouTubeに関しても最近は不安定であるため、直接アップロードした方がいいという。

Hubsのオーディオ設定は、Web Audio APIの「Panner Node」を使用している。『Spoke』では、その設定を細かく決めていくことができる。Propertiesのなかに「Overrid Audio Settings」という項目があり、そこにチェックを入れることで一括設定が可能だ。

「Panner Node」には、ふたつのコーンが存在する。内側のコーンでは音量の減衰がない。グラデーションになっている部分は、プロパティの設定により音が減少する。外側のコーンは、「coneOuterGain」で決めた値で一定になる。

『Spoke』では、チャットでいろんなコマンドを打ち込むことができる。たとえば「/grow」と撃ち込むと、アバターサイズを1段階大きくすることができるといった感じだ。『Spoke』で何かを作るときは、現実と同じようなスケール感で作る方がいい。デフォルトアバターは目線の高さが1.7メートルと、やや高めに設定されている。展示物は、それを意識してやや高めにしておくといいだろう。

「福岡XR部でのHubs活用事例報告っ!」 by ながみね氏

ながみね氏からは、「福岡XR部でのHubs活用事例報告っ!」というテーマでセッションが行われた。福岡を拠点に、XR好きが集まるコミュニティ「福岡XR部」で活動をしているながみね氏。Hubsに関しては、その存在を2020年2月に知った後、様々なイベントを開催している。

今回はそれらのなかから、5つの事例をピックアップして紹介が行われた。まずは「VRパブリックビューイング」だ。こちらはYouTubeでライブ配信のオンラインイベントを、Hubs内で閲覧するというイベントだ。簡単にいうと、オンラインイベントをオンライン上で見るといった試みである。

また、HubsとZoomという異なるツールを、相互に接続するという試みも行っている。月一で開催している「XRミーティング」というイベントが開催されているが、こちらは元々他の場所にある各会場をZoomで接続するというスタイルで行われていた。しかし、最近はオフラインで集まれないということもあり、全員がZoomに直接繋いでいたのだ。

これはこれでいいものの、各会場で集まってコミュニケーションを楽しむというものは失われてしまった。そこでなにかできないかと考え、基本はZoomで繋がっているものの、福岡会場だけではHubsで繋がり大元に接続するようにしたのだ。

実際にやってみたところ、実現することができたという。やらなければいけなかったことは、Hubs内にZoomの画面や音声といった情報を流すことと、ZoomにHubsルームとして参加することだった。これを実現するために、フリーのバーチャルカメラやバーチャルオーディオを使用している。

別の試みとしては、ライブ配信の収録スタジオとしてHubsを活用している。これは、Hubsの画面にZoomの画面を映し出し、それをYouTubeで配信するという試みだ。登壇者は使い慣れているZoomで参加できるため、オンラインイベントとバーチャルな空間をスムーズに繋げることができる。

また、オンライン飲み会をやろうという話しが出たときに、Hubsを活用することになった。HubsではWebカメラを出すことができるため、全員がひとりずつ出すことでZoomのように顔を出してコミュニケーションが行えるようになったという。

最後の事例は、もくもく会の成果報告会場での使用例だ。オンラインでもくもく会を実施したときに、基本はDiscord上の通話でやりとりが行われていた。最後の発表会のときにHubsに移動し、Discordと連携させている。3Dモデラーなら、Hubsのなかで直接出すということもできる。

逆に3Dプリンターで作ったものなどオンラインで見せにくいものに関しては、Webカメラで出して紹介が行われた。

このように、Hubsをいろいろなシーンで活用してきた所感としては、参加ハードルが低く薦めやすいという。簡単にできる上に、できることも多い。他のツールと組み合わせたり、画像などもぽんと出したりすることができる。

ある程度何でもやり放題だが、工夫次第でいろいろできるという。その反面、いろいろ出し過ぎてしまうと帯域不足などになってしまうことがあるため、工夫が必要だそうだ。

「Hubsをつかった社内コミュニケーション」 by William Chan氏

香港出身の留学生であるWilliam Chan氏からは、「Hubsをつかった社内コミュニケーション」というテーマでセッションが行われた。William氏が所属する会社では、社内コミュニケーションとしてHubsが活用されている。その第1回目が、2020年5月14日に行われた鶴ヶ城Hubs内ランチ会だ。

こちらは、Hubs内に鶴ヶ城の3Dデータを使った会場を作り、そこで数人集まって行われたイベントである。目標としては、異なるチーム同士のコミュニケーションの場として利用したそうだが、面白いイベントになったそうだ。

同様に、6月26日には2回目のランチ会も実施されている。

Hubs内で鶴ヶ城を再現しているが、こちらはネットからダウンロードしてきたモデルではなく、メンバーがHubs内で作っている。会津市から鶴ヶ城の点群データをもらい、それをBlenderで3Dモデルに仕上げている。これにより、大きさなどかなり正確に鶴ヶ城を再現することができたそうだ。

また、東京オフィスをHubs内で再現するということも行っている。ポリゴン数が多くなってしまうので、Hubs内で動けるようにするには減らす必要があったという。

Hubsを利用したコミュニケーションは面白いと、William氏はいう。東京と会津という物理的な距離は関係なく、コミュニケーションすることができるからだ。ネットは物理的な距離感をなくしてくれるが、さらにネットを活用してひとつの場所に集まることができるというところも魅力のひとつなのだろう。

PhotoWords 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑誌の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。