2020
05.01

【World MR News】『HoloLens』でSF世界を作る――「HoloLens ミートアップ@ cluster vol.1」レポートその③

World MR News

HoloLensアプリ開発の有識者が登壇し、VR/MRに向いたアプリの得意やHoloLensアプリ開発に関する様々な裏話などを披露するイベント「HoloLens ミートアップ@ cluster vol.1」が、4月22日に開催された。

こちらではその中から、トマシープ氏、藤本賢志氏、ホロ元氏、ちょまど氏のセッションの模様をお届けする。

「Microsoft公式のHoloLensドキュメントを読もう!」by トマシープ氏

トマシープ氏からは、「Microsoft公式のHoloLensドキュメントを読もう!」というテーマでセッションが行われた。今回取り上げるのは「Learning Paths」で、これはマイクロソフトの多数にあるドキュメントを製品別や分野別に学習パスとしてまとめているページだ。

このうち『HoloLens2』に関しては、よくみるDocsになっており、特別な学習コンテンツが用意されているというわけではない。『HoloLens』デザインに関するおすすめのドキュメントという形で、8~12個ほどまとめられている。これらの中には、『HoloLens2』に関するものも4つほど含まれていた。

それが、「デザイン」「デザインと環境(空間マップ、物理空間など)」「パフォーマンス(CPU/GPU最適化など)」「MRTKについて」だ。

具体的には、デザイン分野ではフォントや色の話題が語られている。デバイスと環境では、良い物理空間の条件やQR Code Trackingの話題が、パフォーマンスではプロファイラーの見方のほか、CPUやGPUの改善方法について書かれている。

このうち対話型オブジェクトのページでは、空間に出たUIなどを『HoloLens2』を使って直接手で操作するときに、最適な距離とサイズについて紹介されている。具体的には手で操作する距離は45センチメートル、ターゲットのサイズは1.6×1.6センチメートル、ボタンサイズは3.2×3.2センチメートル以上となっている。

色に関しては、『HoloLens2』で真っ白にしてしまうと明るすぎるため、RGBでいうとR235、G235、B235が良いとされている。また、真っ黒は透過してしまうので、R16、G16、B16で濃い灰色にして試すのがいいそうだ。

ユーザーの位置追跡に関する物理環境については、500~1000ルクスの明るさで60Hzの照明、目印がたくさんある乱雑な空間が良いと具体的に紹介されている。

こうしたドキュメントを読むときのコツは、元文章は英語になっているため、各サイトの一番下から言語変更で日本語が選べるようになっている。しかし、これはマイクロソフトの機械翻訳になっているだけなので、Google翻訳などを利用したほうがいいとのこと。

また、文章を読んでいるだけでは眠くなってしまうので、アウトプットをしたり『HoloLens』を動かすなど、手を動かしたりしながら読んでいくのがいいそうだ。

「KumaMCNの紹介」by 藤本賢志氏

ガチ本の愛称で知られる藤本賢志氏からは、「KumaMCNの紹介」というテーマでセッションが行われた。KumaMCNは、センサーやデバイス好きが集まるコミュニティとして生まれたもので、TMCNにちやほやされることでモチベーションが上がり、熊本に引き困っている人たちを外に出していくことをサポートしている。

最初は、藤本氏が熊本大学で中村薫氏をKinectの講演会で呼んだのがきっかけだった。当時は熊本先進コミュニティというグループを作ったが、直後にフランスに留学したため自然消滅している。

帰国後、熊本にイベントがなかったため福岡に足を運んでいた藤本氏。2016年7月に行われていた「FMCN Meetup」で『HoloLens』の体験会があり、そこで出会ったメンバーとKumaMCNを立ち上げることになったのだそうだ。

これまでKumaMCNは、年間イベント開催数30以上、月間3回ほどイベントを開催している。その中身は、ものづくりやSTEM教育、最新デバイス体験などがメインだ。

最近の活動では、『TouchDesigner』という、プロジェクションマッピングやVJ、インタラクティブコンテンツなどを作るためのソフトウェアを使い、お寺をプロジェクションマッピングで照らすなど、アートよりのことも行っている。

また、バスのオープンデータを使いバス停をインタラクティブで反応させてインタラクティブに見せるということも行っている。さらに最近では、新型コロナのウイルスサイトの編集も行っている。

外出自粛ということもありオンラインの活動が増えてきたこともあってか、最近は毎日オンラインでの活動を行っているそうだ。『HoloLens』のイベントも毎月実施している。今後も毎月こうしたイベントを実施していく予定とのこと。

「HoloLensでSF世界を作ろう」by ホロ元氏

KumaMCNのホロ元氏からは、「HoloLensでSF世界を作ろう」というテーマでセッションが行われた。今回ホロ元氏が取り上げるのは3つの項目だ。ひとつ目は「MRTKStanderdShader」である。

これは、MRTKに同梱されているShaderで『HoloLens』に最適化が行われている。普段使っているようなShdaerは概ねこの中に入っており、ボタンを押すだけで必要な機能を使うことができる。

「MRTKStanderdShader」を利用し、Blenderでオリジナルの3Dモデルを作り、加えてオリジナルのボタンも作成している。BlenderはUV設定が大変だが、MRTKが多機能であるためポンポンと設定するだけで作ることができる。

ふたつ目は本日のメインテーマでもある「PulseShader」だ。こちらもMRTKに同梱されているShdaerで、「MRTKStanderdShader」と比べて実験的なものである。具体的には、メッシュに周期的なパルスが流れるShaderだ。

「SR_TrianglesShader」と「HandTrianglesShader」の2種類があり、後者の方は手だけではなくオブジェクトにも使用することができる。

3つ目のトピックは、『AzureKinect』と『HoloLens』を使った、『スターウォーズ』の世界の実現だ。『AzureKinect』で自分を撮影し、objファイルとして書き出してそれにMRTKの「PulseShader」を適用している。

ちなみに通常は写真のようなものが出るが、MRTKの「PulseShader」を使うことで『スターウォーズ』感を出すことができるのである。

「Azure Spatial Anchors 入門」by ちょまど氏

ちょまどの愛称で知られる、マイクロソフト Cloud Developer Advocateの千代田まどか氏からは、「Azure Spatial Anchors 入門」というテーマでセッションが行われた。

「Azure Spatial Anchors」とは、アンカー情報をクラウド上に保存してくれるサービスだ。これにより、クロスプラットフォームでシェアリングが実装することができるようになる。実際に「Azure Spatial Anchors」が使われている例としては、AR版の『Minecraft Earth』などがある。

そもそもシェアリングとは、同じ仮想空間を共有することで現実世界に同じ仮想オブジェクトを表示することができるというもののことを指している。それを実現するにはアンカーが必要で、アンカーがずれていると現実世界で表示されるオブジェクトの位置もずれて見えてしまう。

アンカーとは特徴データのことで、具体的に点群やマーカーのことを指している。「Azure Spatial Anchors」では、点群データを送信している。こちらを利用することで、現実空間の同じ場所を指し示すことができるようになるのだ。

アンカーの保持の仕方については3つほどある。まずはアプリの中で持つ場合。ふたつ目は、自前のシェアリングサーバーを立てる。3つ目はクラウドで保持するという方法だ。この最後の手段のひとつが、「Azure Spatial Anchors」というサービスである。

 

「Azure Spatial Anchors」に対応したデバイスには、『HoloLens』のほかARKit対応のiOSデバイス、ARCore対応のAndroidデバイスがある。開発環境としては、UnityやC++などが用意されている。

公式チュートリアルも用意されており、そちらで学んでいくことも可能だ。このチュートリアルをやっていくと、異なるデバイスで同じアンカーが表示できることを学ぶことができる。

PhotoWords 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑誌の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。