2020
03.30

【World MR News】立体視ディスプレイ『Looking Glass』で立体感のある動画作成や子供向け屋外展示コンテンツなどの知見を披露――「第4回 Looking Glass勉強会」レポート①

World MR News

「るきべん」こと、「第4回 Looking Glass勉強会」が2月10日に東京・銀座にある富士通クラウドテクノロジーズで開催された。ちなみに今回は、本イベントの1周年記念として開催されたものでもある。

本来は、Looking Glass Factory CEOのShawn氏の登壇や、昨年話題になったLooking Glass 8Kのデモ展示も行われる予定だったが、残念ながらShawn氏の家族の問題で来日が中止に。あわせて新型ウィルスなどの影響もありイベント自体の開催も危ぶまれたが、無事実施される形となった。

本稿では、黒河優介氏とbibinba氏によるセッションの模様をピックアップしてお届けする。

「LookingGlassで立体感ある動画コンテンツ作成で、気を使ったこと・ハマった事」by 黒河優介氏

最初のセッションは、黒河優介氏の「Looking Glassで立体感ある動画コンテンツ作成で、気を使ったこと・ハマった事」だ。黒河氏は、今回3つのコンテンツを『Looking Glass』向けに作成している。ひとつは、『UnityChanCRS』をカメラワークも含めて移植したものだ。残りは、『UnityJapanオフィス(HDRP利用)』と『UnityCar(HDRP利用)』という、レンダリングが美しい作品である。

▲黒河優介氏。

前回までカメラ固定指定にして『Looking Glass』の映像を作成したものを、通常の2D映像同様にカメラワークを含めて移植することを目指したというのが、今回のコンセプトだ。こちらは、VRと異なりカメラ演出も入れられることができるのかという検証と、カメラワークに合わせて立体感を調整し、良い映像が出来るかということも検証している。

通常の映像で立体感を与えたいときは、カメラの画角や被写界深度を意識する。画角が広いときは奥側に配置したものが小さく、ズームしたときは大きく映る。また、被写界深度で、ピントが合っていないところがボケていたほうが、より立体感を感じることができる。

『Looking Glass』でもカメラの画角を調整することが可能だ。また、ハードウェア的に特殊なことをしなくとも、ボケるところはボケるようになっている。そのため被写界深度のエフェクトは外して、『Looking Glass』側に任せるようにした。

『Looking Glass』のパラメーターでは、「size」のパラメーターの値が立体感に大きな影響を与える。それと「Fov」(画角)によって、どこにピントが合うかが決まる。

今回制作したコンテンツでは、カメラが動き回る。そこで、UnityのTimelineを拡張してカメラのカットが変わるごとに、手で調整を行っている。「size」を変更すると前後関係が勝手にずれてしまったため、それを補正するためのパラメーターも自作している。

合わせて、オリジナルの映像もリファレンスとして見ながら調整できるようにもした。カメラが動くごとにこうしたパラメーターを手作業で修正していったため、ひたすら気合いで作っていったという。作業時間としては、2日ほどでUnityちゃんを完成させることができた。

実際にこうした作業行いコンテンツを作ってみた感想としては、カメラワークがあるとエモいということがわかった。そこで、次にフォトリアルな映像を作ることができるUnityHDRPに対応することに挑戦してみた。・・・・・・が、こちらは罠しかなかったという。

そもそも、「LookingGlassSDK」を改造しないとUnityHDRPには対応することができなかった。具体的には、CameraのコールバックがHDRPでは呼ばれないという現象が発生したからだ。そこで、呼び出せるように改造を行っている。

その結果、Lightingがおかしかったり位置がずれたりと、不具合が多く見られたため諦めている。1フレームの中に45枚の映像を作ることを諦めて、複数回の「Camera.Render」を使い、1枚のQuiltを作っていくという方針にしている。これは、少しずつカメラの位置をずらし、映像をpngで保存。その画像からQuiltを作っている。

また、上手くいかなかったこととしては、被写界深度を変えて手前にキャラクターにフォーカスがあっていたものがボケていき、奥側にいるキャラクターのほうにピントが合っていくという演出がある。

こちらは、正面から見たときは狙い通りにフォーカスが変わったのだが、少し横にずれたときにカメラのアングルが意図せずに変わってしまった。これは「size」で無理矢理調整していたため、「size」が変わることで横からの角度が大きく変わったというのが理由だ。こちらに関しては、いいアイデアを募集中とのこと。

「子供向けコンテンツ×屋外展示で得た知見」 by bibinba氏

bibinba氏からは、「子供向けコンテンツ×屋外展示で得た知見」というテーマでセッションが行われた。きっかけは、bibinba氏が所属しているTISが、FC今治のJ2昇格イベントに出展することになったからだ。こちらでは、子供を対象にテーマは忍者や海賊でコンテンツが作られることとなった。

▲bibinba氏。

bibinba氏の所属する部署では、OculusQuestの開発も行っていたのでVRコンテンツも考えたが、子供でも簡単に遊べてアテンドもしやすいということから『Looking Glass』が選ばれた。そこで作ったのが、『Pirate In The Glass』というコンテンツである。

内容としては、『Leap Motion』で操作しながら船に近づいてくる海賊をなぎ払っていくというもの。ライフ性になっており、30秒間守り切ることができるとゲームクリアとなる。

イベントは、晴天の2019年11月13日の日中に開催された。場所は開けた駐車上で、テントが張ってあり日光は直接当たらないようになっていたのだが、画面がまったく見えない状態だったという。白いシートを付けてみたところ、それでもあまり変化はなかった。

展示では『Looking Glass』のスタンダードとラージを使って行われ、それぞれ囲いも作っていた。こちらはそれなりに効果があった。ラージの方は事前に箱が手に入らなかったため、現場で入手している。アテンド側からは見えにくかったものの、体験者は見えていたようだったという。

体験者は3~8歳ほどの子供で、30人ほどが実際にプレイした。『Leap Motion』を使用したコンテンツであったため、過去の事例を参考に「手をかざしてください」という指示をイラスト付きで設置している。しかし、まったく伝わらなかった。

「手をかざす」という意味が子供には伝わらず、『Leap Motion』の上で手を振ってといっても伝わらなかったそうだ。そこで、ディスプレイの前で手を振ってといったところ、ようやく伝わったという。

工夫した点ポイントは、ライフ調整だ。こちらは、ゲーム開始前にライフの数をゲーム開始前に変更できるようにしておいた。対象となる子供の年齢の幅が広く、能力差もあるためである。結果的には、やっておいて良かったという

それ以外にも、ゲームということでBGMを使って雰囲気作りをしている。また、サッカーのイベントだったので、ゲーム中に飛んでくる大砲をサッカーボールに変更した。たまたまだったが、PCが弱く『Looking Glass』が頻繁に落ちていたが、デスクトップ画像をシルバニアにしていたおかげで子供ともコミュニケーションすることができた。

ここから得た知見としては、屋外では暗幕は必須。子供向けとして簡単な操作や難易度調整も入れておいた方がよい。なんだかんだいいながら、楽しんでもらえたところは良かったそうだ。

PhotoWords 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑誌の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。