2019
08.26

【World MR News】コヤ所長&タミヤ室長が語るVR ZONEがMAZARIAになったワケ【出張ヒストリア!】

World MR News

ヒストリアは、8月4日に日本工学院専門学校 蒲田キャンパスでUnreal Engine 4を使用したゲームの事例紹介勉強会「出張ヒストリア! ゲーム開発勉強会2019」を開催した。本稿ではその中から、バンダイナムコアミューズメントの“コヤ所長”こと小山順一朗氏と“タミヤ所長”こと田宮幸春氏によるセッション「VR ZONEがMAZARIAになったワケ」の模様をお届けする。

写真左からコヤ所長とタミヤ室長。

バンダイナムコアミューズメントは、この7月12日に東京・池袋サンシャインシティ ワールドインポートマートビル3階にアニメとゲームに入る場所『MAZARIA(マザリア)』をオープンした。

その前身である『VR ZONE』は、同社が建物や開発、運営をすべてトータルプロデュースしたVR専用のアミューズメント施設だ。VR元年の2016年にお台場で実験的に実施され、その時は9つのタイトルが開発されている。

「当時はVRが好きな人が集まって、お互いに見せ合っているという時代だったので、お客さんが入ってくるか不安だった」とタミヤ室長は振り返る。しかし、実際にやってみた結果、想定以上に集客することができた。

そこで2017年7月に、東京新宿にVR専用の施設『VR ZONE SHINJUKU』をオープンしている。期間満了にともない今年の3月31日に閉店してしまったが、お台場のときからさらに9つのアクティビティが追加されている。

なかでも『VR-ATシミュレーター装甲騎兵ボトムズバトリング野郎』は閉店近くにフリープレイに切り替えたところ行列ができたという。『VR ZONE SHINJUKU』はチケット形式だったが、何度も遊べるようになることで、人が並ぶ列にも変化がおきたそうだ。

21ヵ月実施された『VR ZONE SHINJUKU』に訪れたユーザーは、男女比率では女性が60パーセントを占めていた。これはゲームというよりも、テーマパークのひとつとして施設に遊びに来たユーザーが多かったからだとコヤ所長はいう。外国人の比率も30パーセントと多いのが特徴的なところだ。

メディアからも多くの注目を集め、「クールジャパン マッチングアワード2017」でグランプリを受賞したほか、「AMDアワード2018」でも優秀賞を受賞している。

■VR≒最新ゲームと認識している人たちはVR施設には訪れない

そうしたなか、課題もいくつか見つかっている。ひとつは、VRで事前にどんな体験ができるのか伝わりにくいというところだ。その結果、集客に繋がりにくくなってしまっていた。VRを知っているか調査したところ、「知っている」と答えた人は90パーセントほどと高い認知度だった。しかし、ロケーションVR体験は6パーセントしかおらず、テレビなどで情報を見てこういうものだと自分のなかで認識して、そこで終わってしまうというパターンがほとんどであった。

「お客さんにとって、選択するかしないかの判断が終わってしまっていて、VRはそんな感じなんでしょ? だから、私はいいですというようになってしまう」と、タミヤ室長はいう。また、VR体験自体がいわゆる「インスタ映え」や「写真映え」といったものと、相性が悪いというところも集客に結びつかない理由にあげられていた。

そこで、グループインタビューを実施して、『VR ZONE』を知ってはいるが訪れない人たちに調査を行っている。30代男性未婚既婚者で仕事を持っている人のグループ、30代女性既婚子供なしで仕事を持っている人のグループ、20歳前後の女性で大学生と社会人のグループに聞いたところ、20歳前後女性のグループだけが、外遊びにモチベーションがあることがわかった。

また、有名なアミューズメント施設をグループ分けしてもらったところ、『VR ZONE』を始めとする「V」が付く施設については、「VR枠」に入れられてしまい、そこから一切語られることがなかったという。

VR体験施設については、どのグループもゲーセンの進化版と捉えており、ほとんどの場合行かないと断言していた。つまり、情報番組や駅の広告で見たことはあっても、それが「VR体験ができる施設」にとどまっており、VR体験に興味が湧かないというのが行かない理由になっていたのである。

興味が湧かない理由は、30代男性は出かけるのが「めんどくさい」や「かったるい」、20代と30代の女性は「最新ゲームである」ため、自分向きではないと捉えてしまう。つまり、VRは最新のゲームであるという意識があるため、それらに興味がない人たちは施設に来ないのだ。

しかし、そうした人たちにPVを見せたところ、友達や彼氏と一緒に取り乱すほどはしゃげることに共感した人や、あるいは『ドラゴンクエストVR』のようなコンテンツを遊びたくて友達を集めたくなったひとたちは、施設に行きたいというように変わったという。

つまり『VR ZONE』を知っていても来ない人たちを呼び込むには、友達や彼氏と一緒にはしゃげる遊園地のようなことが最初からわかっている必要がある。また、たくさんのアトラクションがあり、「VR○○」といった屋号は付けないようにしたほうがいいということだった。

ロケーションVR自体にも課題があり、リピート率が弱かった。そこで、「○○が遊べる」ということと、中身が面白ければリピート率が強化できると考えて『MAZARIA』が生まれている。

■『MAZARIA』はテーマパークとはどんなところか考えていきながら組み立てていった

VR体験施設はゲームセンターの進化版と言われることが多いが、ゲームには得手不得手はあっても、遊園地自体に得手不得手という概念はあまりない。ゲームセンターの進化版である限り、ゲームが苦手な人は来店する理由がないのだ。

人気の遊園地にはテーマがあり、それらをテーマパークと呼んでいる。そこで、テーマパークとはどんなところかというところから、『MAZARIA』を組み立てていった。

非日常の世界と言われることが多いテーマパークだが、日常の世界はバラバラでお互いを敵視する。それがスクリーニングされると警戒心が解け、一緒に楽しめるようになる。このスクリーニングがしっかり出来ているところが非日常だとコヤ所長はいう。

テーマパークは、アニメや絵本で語られる倫理観やトーン&マナーで、楽しさと同時に縛っている。バラバラな属性の人たちであっても、ひとつのストーリーに共感させることが出来なければ、テーマパークにはならないのだ。

このストーリーが、『VR ZONE』には欠けていた。アクティビティを目的に来てもらうのは、遊園地と同じ考え方である。そこで『MAZARIA』では、「アニメとゲームに入る場所」だと言い切っている。

アニメやゲームの2次元と人間社会の3次元のはざまにある2.5次元の場所と設定した『MAZARIA』だが、そこに入るには「ウソ」が必要となる。この「ウソ」は、心のヨロイを脱がせるために必要なものだ。

施設の入り口でアニメやゲームを目新しい表現で惹きつけ、入場ゲート手前のモニターでパークの魅力を伝える。そしてはじまりの部屋で納得してもらい2.5次元の世界へと誘っていくのだ。

施設の入り口にある敷居は以前からあったものだが、前の施設もその敷居から先に進んでもらうのが難しかったそうだ。そこで、中に入りやすい雰囲気を出すために壁側に『WALL MAZARIA』と呼ばれる園内誘引モニターで8bitのオリジナル映像を流すようにしている。

▲『WALL MAZARIA』に表示されるアニメーションの一部。最初はアーケードゲーム機の電源を入れたような表示から、オリジナルの『パックマン』に近いものから3Dへと変化していく。

「はじまりの部屋」では、巨大なVRゴーグルが登場する。これはVRゴーグルの向こう側にゲームやアニメの世界があるという設定で、巨大VRゴーグルを使ってレンズの向こう側にいくということを表現している。

「はじまりの部屋」で施設に関する説明を受けたあと、最初に目に飛び込んでくるのが遊園地の象徴であるメリーゴーランドだ。また、1階から3階までの壁を使った超巨大なプロジェクションマッピングがあり、そこでは『パックマン バトルロイヤル』というゲームが遊べるようになっている。

■正しいと思ったら舵を切り直すことも必要

最後にタミヤ室長から語られたのは、「正しいと思ったら舵を切り直そう」ということだった。当たり前だと思われがちだが、プロジェクトが進んだときに気付いても舵を記事直すのは難しい。しかし、正しい方向がわかってしまったときは修正をしていく必要があるのだ。

そのときに重要なのは、集団ベースで語ると自分も迷ってしまうだけではなく、プロジェクトメンバーも迷い出す。手段はかなえるための目的のためにあり、主題の課題は状況によって変わることもあるが目的は変わらない。そのため、プロジェクトを作る際に、実現したい目的は何か。ゲームに例えるなら、ユーザーに味合わせたい気持ちは何かというところから目的を決めて、言葉化して設定しているそうだ。この点がぶれないように、同社では開発を行っている。

「プロジェクトを進めていくと試行錯誤は沢山でてくるが、目的さえブレていなければ各メンバーの試行錯誤は歓迎した方がいい」とタミヤ室長はいう。しかし、手段ベースで語るとプロジェクトは迷走してしまう。これを繰り返すとデスマーチになってしまうのだ。

これまで親しまれてきた『VR ZONE』という屋号から方向転換するのは、すごく勇気がいることだったとコヤ所長は語る。『VR ZONE』を守るということではなく、VRエンタテイメントを広めるためには、新施設ではあえてVRという言葉は使わない方がいいと判断したのだ。

最後に「準備は早めにはじめよう」という言葉を付け足したタミヤ所長。プロジェクトの途中から施設名を変更しようという話になり、大混乱だったそうだ。また、人件費を削ることを宣言していたためブリーフィングに必要な動画なども用意することになったそうだが、目的自体は変わっていないためバタバタすることもなく、進めていくことができたという。「目的と手段を意識しながら、常に正しい舵切りをするとプロジェクトにとって幸せな未来が待っている」と語り、セッションを締めくくった。

PhotoWords 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑誌の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。