2019
06.27

【World MR News】次世代通信規格5Gの登場でどのようなイノベーションが起こるのか? 「新経済サミット〔NEST〕TOKYO 2019」レポート①

World MR News

一般社団法人新経済連盟は、6月20日に日本最大級のグローバルカンファレンス「新経済サミット〔NEST〕TOKYO 2019」をザ・プリンスパークタワー東京で開催した。この新経済連盟は、2016年6月より活動を開始しており、イノベーション(創造と革新)、アントレプレナーシップ(起業家精神)、グローバリゼーション(国際競争力の強化)の促進を目的に活動を行っている。

新経済連盟代表理事で楽天 代表取締役会長兼社長を務める三木谷浩史氏は、冒頭のオープニングリマークスで「残念ながら日本の国内市場では外国勢のネットシェアが拡大している」とのべた。

▲三木谷浩史氏。

インターネット広告は70パーセント、eコマースは25パーセント、音楽定額制配信サービスでは75パーセント、動画定額制配信サービスは20パーセントと外国勢がシェアを占めている。なかでも、アプリストアにおいてはアップルとグーグルの独占に近い状態になっており、「すべての企業が30パーセントという、大変重い税金のような手数料をこの2社に支払っている」と三木谷氏は語る。

そうした中、日本初のベンチャーが海外でどのように広がっていくか。アプリケーションを開発するだけではなく、もっと社会に根付いた産業を担っていく企業や仕組みを作って行くことが新経済連盟の使命であるという。

■5Gのインパクト -次世代通信規格による破壊的イノベーション-

三木谷氏のオープニングリマークスに続き行われたセッションが、「5Gのインパクト -次世代通信規格による破壊的イノベーション-」だ。こちらはモデレーターとしてジャーナリストの石川温氏と、パネリストに楽天 副社長執行役員CAO/楽天モバイル CTOのタレック・アミン氏とTexel CEOのアミール・セゲブ氏が登壇した。

▲石川温氏。

▲写真左からタレック・アミン氏とアミール・セゲブ氏。

5Gには、「高速大容量」「超低遅延」「多数接続」という3つの特徴がある。5Gの端末は、この1年間で75以上のデバイスが登場するといわれている。日本ではまだサービスが始まっていないが、世界ではすでに発売されており、5Gスマホが購入できる時代になっているのだ。

アメリカや韓国、ではそれぞれ3キャリアが5Gのサービスを開始しているほか、ヨーロッパでも徐々に増えてきている。中国でも年内には開始されると言われている。一方日本の状況だが、ドコモは9月20日にラグビーのワールドカップが始まるタイミングでプレサービスが開始されるとアナウンスしているほか、来春には大手4社が商業サービスを開始する。

「世界に比べて日本の5Gは後れている」と言われているが、たしかにスケジュール的には遅れ気味だ。しかし、5Gは10年、15年、20年使っていくという規格であるため、そうした長いスパンで見ると出遅れではないと石川氏はいう。

4月10日に総務省から5G免許の割当が行われた。3.7GHz帯、4.5GHz帯、28GHz帯という幅広い電波が使用できるのが5Gの特徴である。中でも28GHz帯の活用に期待が持たれているが、直進性が強く使いにくい電波とも言われている。そのため、どのように活用していくかが、各キャリアの腕見せ所となる。

▲石川氏が先日シカゴで5Gを体験してきた模様も紹介された。ダウンロードは4Gの10倍ほどの速度が出ていた。

5Gのユニークな事例も紹介された。JALとKDDIが行っている実験では、直進性の高い28GHz帯の電波を真上から出して、ゲートのみに当たるようにしている。これにより、オンラインで購入したチケットを持っている人は、何もタッチすることなくゲートが通過できるようになる。こうした技術は、鉄道会社などでも活用ができそうだ。

日本の5Gには後れていのか? という問いに対して、タレック・アミン氏は異論があるという。それは、最も革新的な5Gの技術は日本から始まっていくからというのが理由だ。過去30年間、ネットワークの状況は大きく変わっていない。一部5Gのサービスがスタートしているが、これには真実の5Gと偽の5Gがある。

日本が後れていると心配する必要はなく、アーキテクチャ、イノベーション、クラウドのいずれも日本は最先端にいるのだ。

■5Gではエッジコンピューティングというキーワードが重要になる

Texelの企業紹介に続いて、登壇者3名によるトークセッションが開始された。

石川氏:VRは一時盛り上がりましたが、伸び悩んでいます。そうした映像コンテンツが爆発的にヒットするためには、5Gに期待しているところはございますか?

セゲブ氏:5Gは第五世代です。これまでの世代と比べたときに、進化よりも革命になる可能性を持っています。シンプルに言うと、より良い接続性です。それだけ? と思われるかもしれませんが、接続性が良くなると、巨大なデータを扱えるようになるためARやVRという技術が採用されるようになります。

5Gで、初めてモバイルオペレーターがサービスを提供できるようになります。ライブイベントなどでも5Gが活用できます。もっというと、モバイルサービスの民主化にも繋がっていきます。初めてVRやARが形づけられるようなります。私たちのデータの消費の仕方も完全に変わります。

多くのプレイヤーが係わっており、5Gを成功させるにはいくつかのキーエレメントがあると思っています。その中のふたつに注力したいと考えています。ひとつはカバレッジで、もうひとつがホモジネイティです。5Gの本当の意味での価値を持っていくには、全体的なカバレッジが必要です。エッジコンピューティングで全体を活用するということが重要なのです。

石川氏:5Gを活用するには、エッジコンピューティングというキーワードが重要になってきます。処理するものが端末の近くにあることで、反応速度も良くなり超低遅延で処理が行えるようになります。その点楽天では、エッジコンピューティングで他社とどのような差別化を測っていきますか?

アミン氏:我々のネットワークアーキテクチャにおいては、2018年の6月にスタートし、白紙の状態で始まりました。私たちが夢見たアーキテクチャは、これまで世界になかったものです。

目指したところは、コンテンツをユーザーの近いところに持っていくということです。そのためにはエッジである必要があります。エッジを考えたときに、ネットワークに何が必要なのかといったことや、物理的な施設、テクノロジー、アーキテクチャなど、目指すところから引いていきました。

私たちは唯一、コントロールプレーンとデータプレーンのトラフィックを分けることができるアーキテクチャを持っています。これにより、ローカルでブレイクアウトすることが可能です。

エッジには物理的な施設が必要ですが、日本では沢山エッジをホストできる施設があります。しかし、それだけでは不十分です。エッジでのローカルブレイクアウトが必要です。また、エッジに関しては非常に儲かるビジネスになると考えています。サードパーティのデベロッパーに対して、エッジサービスを提供すれば非常にいいビジネスになります。

PhotoWords 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑誌の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。