05.13
【World MR News】ホログラムディスプレイ『Looking Glass』を使ったアイデアが集結した「【東京開催】Looking Glass ミートアップ with #北海道VR」をレポート①
北海道コミュニティ(DoMCN)の出張企画第一弾として、4月21日にPsychic VR Lab:TIMEMACHINEでデスクトップ型裸眼立体視ディスプレイ『Looking Glass』をテーマにしたミートアップ「【東京開催】Looking Glass ミートアップ with #北海道VR」が開催された。
2018年11月から日本でも入手可能になった『Looking Glass』。一見ただのディスプレイのようにも見えるが、首を左右に揺らしながら視点を変えることで、まるでそこに存在するかのような立体的なホログラム映像が見られるというユニークなデバイスだ。この4ヵ月間で、「第1回 Looking Glass勉強会」「第1回 Looking Glass ハッカソン」が立て続けに開催されるなど、徐々に盛り上がりの輪が広がってきているきている。
本稿では、同イベントの中からdecchi氏、miyamo氏、Junya Ishioka氏、めんたろ氏のライトニングトークをピックアップしてご紹介する。
■「Kandao Qoocamのステレオ写真をLooking Glassに表示してみた」
decchi氏からは、一眼360度と2眼180度の撮影ができるVRカメラ『Kandao Qoocam』で撮影した映像を『Looking Glass』に表示する方法について紹介が行われた。『Kandao Qoocam』は5万円ほどで入手可能なスティックタイプのカメラだ。本体に液晶はついておらず、スマホと連動して操作を行うようになっている。
平面ディスプレイは価値がわかりにくく、VRは面倒だ。そこでdecchi氏が注目したのが『Looking Glass』である。『Kandao Qoocam』のステレオ写真を撮影することができる。それを無料で入手できる『Qoocam Studio』という編集アプリで2D画像とデプスマップに変換する。ただし、1枚ずつ変換していくため、大量のデータを扱うのは辛いという。
このデプスマップは、そのままでは後の工程作業でうまくいないことがあるため、おまじないとしていったん『ペイント』で開いてJPEG画像に保存しておく必要がある。
画像の準備が出来たら、『ステレオフォトメーカー』を使い『Looking Glass』用に変換を行う。この『ステレオフォトメーカー』とは、むっちゃん氏(@spmaker)が公開している画像変換ツールだ。『Looking Glass』の機能もどんどん追加されているという。『Looking Glass』はキャリブレーションが面倒と言われるが、これにより簡単に行えるようになったそうだ。
ステレオフォトメーカー
http://stereo.jpn.org/jpn/stphmkr/index.html
変換した画像はすでにレンダリング済みであるため、パワーはほとんどいらず『Raspberry Pi』に『Looking Glass』を繋いで表示することができる。「HoloPlaySDK 1.0.0」からQuilt画像とUnityのシーン合成ができるようになった。それを活用して、実写とUnityで作ったバーチャルなCGを合成して表示することもできる。
■「裸眼立体空中お絵かきの話」
miyamo氏からは、『Looking Glass』を使って空中に絵が描ける『裸眼立体空中お絵かき』の紹介が行われた。こちらの構成は、『Looking Glass』と空中に映像が浮かんで見える『ASKA3D』を使用。コントローラーは、『Real Sense T265』を採用している。
『Looking Glass』と『ASKA3D』を組み合わせると、絵が反転してしまうという問題がある。こちらに関しては、Limg氏が記事で詳しく紹介しており、そちらが参考になるそうだ。また、『Real Sense T265』は、Intel RealSenseのGitHubにあるサンプルプロジェクト
の「SLAM(自己位置推定)」のシーンを利用している。
ASKA3D × Looking Glass のためのハック
https://qiita.com/Limg/items/9d29bd44ae5dcda2d422
当初は『Leap Motion』を使用する予定だったが、ネタが被る可能性があったため、変更されている。『Leap Motion』から『Real Sense T265』に変更したことにより、トラッキングが安定しており絵を描く分にはストレスフリーになったという。また、『Leap Motion』よりも広範囲に位置トラッキングができるため、お絵かきの幅も拡がったそうだ。グリップを使用しているのだが、それを持った感じがしっくりくるという。
逆に悪い点としては、コードが若干邪魔になり暗闇が苦手だという。しかし、『ASKA3D』は暗闇の方が映えるため、相性はあまり良くないそうだ。
■「一般へのハンドジェスチャーUI導入装置としてのLookingGlass」
Junya Ishioka氏からは、一般の人に向けてハンドジェスチャーUI導入するための装置としての『Looking Glass』をテーマに紹介が行われた。
『HoloLens』の便利さを伝えようと思っても、実際に被ってみないとわからない。また、ハンドジェスチャー(エアタップ)という、あまり普段行わない動作が必要となり、操作ミスが多発するという問題がある。そのため、短い時間で多数の人に向けて行われる体験会などでは、その良さが伝わりにくいのだ。そんなときに登場したのが『Looking Glass』で、Junya Ishioka氏はすぐに購入したそうだ。
『Looking Glass』では、『Leap Motion』を使ってハンドジェスチャーで手の動きを仮想空間内に直接反映させることができる。そこで、『HoloLens』の前に『Looking Glass』を先に触ってもらう実験を行っている。
初めて『HoloLens』を被った人は、視界の下の方でエアタップを行うことが多い。しかし、この実験を行ってからは高い位置で操作してくれるようになったという。体験者はカメラなどの構造を理解しているわけではない。しかし『Leap Motion』がカメラだというのはわかりやすく、『Looking Glass』ですぐに見ることができるので、ディスプレイとの位置関係を覚えてもらうことができる。
『HoloLens』に移行するときは、頭の位置にカメラがあることを教えることで、機械に合わせる意識が生まれるようになるのだ。
『Looking Glass』が理解しやすいのは、3つのポイントがあるとJunya Ishioka氏はいう。ひとつは、手が表示されているところだ。ふたつ目は、視野から外れたときに手が表示されなくなるところである。3つ目は手の操作が見えているためわかりやすく、脳が学習してくれるのである。
その後『HoloLens』に移行すると、手が表示されない。また、視野がどこかもわからず、手の操作に対する応答も成功しないとわからない。しかし、先に『Looking Glass』で学んだことが活かされ、模索ができるようになる。結果として、体験会がスムーズになるそうだ。
また、『Looking Glass』の場合は体験待ちをしているときにその様子が見られるため、どんな感じで操作すればよいのかもわかりやすい。タップ誤爆も減り、アテンドする内容も増やすことができるという。さらに、元々体験してもらいたいポイントであった空間UIの感覚を、より短い時間で体得してもらうことができるのだ。
『Looking Glass』はARの導入にも最適だ。これまでの2Dディスプレイは体験人数も多く疲れにくさもない。しかし、情報空間は2次元の狭いものになる。一方、ARやVRの場合、同時体験人数はひとりで酔ってしまう場合もある。最大の問題は、移行ハードルが高いため興味が持たれないというところだ。しかし『Looking Glass』は、そのふたつの間を補完する存在になるのである。
■「Making of LookingComb」
めんたろ氏からは、『Looking Glass』用のコンテンツである『LookingComb』の制作秘話が紹介された。
元々は1月25日開催されたハッカソンイベント「Global Game Jam」で作成されたものだ。内容としては、『Looking Glass』を横に寝かせてモリ代わりの自撮り棒の先端に『Vive Tracker』を取り付けて、海底を自由に移動して昆布を時間内にすくい上げていくというゲームである。
ちなみに「Global Game Jam」自体は世界中で同時に行われるイベントだが、『Looking Glass』を扱っていたのはこの『LookingComb』を含めて、6タイトルのみだったという。
昆布漁は、船に乗り水中をメガネで見ながらモリですくい上げるというものだ。そこでコンセプトにしたのが「海底を覗きたい」ということだった。どう遊ばせようかと考えたところ、最初に考えたのが『Looking Glass』を左手に持ち右手でモリを持つというスタイルだ。しかし、『Looking Glass』は2.2キログラムもあるため、片手で持つのは大変である。そこで、平行に台に乗せる方法を採用している。
『Looking Glass』をスチールラックに固定するための台などは、百均で揃えている。また、外側のケースを板で工作している。
めんたろ氏は、この時点で『Looking Glass』のコンテンツを作ったこともなく触ったこともなかった。VRのようなものだと思っていたら、見えるレンジがそれほどなく苦労したそうだ。上から画面を見たときに、綺麗に見える範囲が意外と短い。そこで、地形にも苦労したという。
「Global Game Jam」の参加者は大人ばかりであったが、ファミリー層の多いところに展示していたため、子供が興味を持ったそうだ。しかし、高さがあって除きにくいということに気づき、そこが盲点だったという。
Photo&Words 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑誌の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。