2019
03.06

【World MR News】バーチャル空間の3Dモデル展示即売会「バーチャルマーケット」とは?――「VRSionUp! #2」をレポート

World MR News

GREE VR Studio Labは、3月1日にVRを通したイノベーションの発掘」をテーマにしたVR研究系ワークショップ「VRSionUp! #2」を開催した。

今回で3回目の開催となる、本ワークショップ。今回は、3月20日から開催される「Laval Virtual 2019」に向けての予習会と、3月8日~10日に開催される「バーチャルマーケット2」の予習会、ライトニーングトークの3本立ての構成で行われていた。本稿ではその中から、「バーチャルマーケット」に関する話題をピックアップしてご紹介していく。

本イベントを主催者する、グリー「GREE VR Studio Lab」ディレクターの白井暁彦氏。

仮想空間上のコミケを目指す「バーチャルマーケット」

「バーチャルマーケット2」の開催直前だった今回のイベント。そもそも「バーチャルマーケット」の存在自体を知らない人が多いということもあり、盛り込まれた企画だ。はじめに、「バーチャルマーケット」を支える裏方として、VR法人HIKKYの新津佑介氏が登壇し、同イベントの紹介が行われた。

VR法人HIKKY 新津佑介氏。

■バーチャルマーケット

https://www.v-market.work/

この「バーチャルマーケット」は、バーチャル空間上で行われる3Dモデルの展示即売会だ。目指しているものはコミケで、前回のイベントでは東京ビッグサイトをオマージュしたデザインの会場になっていた。VRクリエイターやVRに関する技術を持った人たちを、みんなで見せ合える場所として企画されたものだ。

当初はどれぐらいの規模になるかわからなかったため、50サークルで募集したところ、翌日には埋まってしまった。そこで追加で30サークルの募集を行っている。実際に開催したところ、アニメーションやアバター、フルスクラッチのメロンパン(!?)ありと、想像以上のものが集まったという。

この「バーチャルマーケット1」を実際に開催してみて、新津氏は「こんなにも展示をしたいと思っていた人がいたことに驚いた」と感想を述べていた。ちなみに2回目となる今回は、400ブースまで拡大されて実施される。ジャンル別に6つの会場にわかれており、エントランスから各会場へアクセスが行える。

写真左からバーチャルマーケット実行委員会代表 動く城のフィオ氏と、番匠カンナ@バーチャル建築家氏。

続いて、バーチャルマーケット実行委員会代表 動く城のフィオ氏から、「バーチャルマーケット2」の魅力について紹介が行われた。先ほども話に出たが、今回は400サークルものクリエイターがブースを出展し、そこで完全オリジナルの3Dモデルアバターや装備品、装飾品などの販売が行われる。

世の中には、VRChat上で生活している人が沢山いるとフィオ氏はいう。そうした人たちに向けて、アバターやーチャル空間上での生活に必要な衣食を提供するようなイベントである。

エントランスは企業ブースにもなっており、19もの企業がスポンサードしている。そこから各ワールドに移動していくのだが、ひとつのワールドにつき概ね40サークルが出展している。

こちらは、サイバーパンクやSFなどのジャンルを扱うワールドの「Future Terminal」。「バーチャルマーケット2」では、エントランスを含めて11会場が用意されている。

初回の開催では80サークルで1日だけの開催だったため、その日だけでは回りきれないという意見が出た。そこで、2回目となる今回は3日間の開催となったのだが、サークル数も5倍と増えてしまったため、全部を回りきるのは難しいかもしれない。

19の企業から協賛がある「バーチャルマーケット2」だが、エイベックスは企業ブースとして出展する。こちらでは、最近出来たばかりのエイベックスビルをVR上で再現するという。

また、pixivが展開しているPCサイトの「BOOTH」に、「バーチャルマーケット2」の特集ページが掲載される。秋葉原のPCショップTSUKUMOは、来場者人がTSUKUMO eX.の広告に掲載されるという試みが行われる。これはプリクラのようなノリのものだという。

最近は、VRを使ったライブが行われることも多くなってきたが、「バーチャルマーケット2」でもライブが実施される。そのうちのひとつは、YIRIMIYA氏の「PARTICLE LIVE」だ。これはVRを観ることで、没入感の高い体験ができるという。

また、アルテマ音楽祭というVRの音楽チームのライブも実施される。バーチャルミュージアムで体験型の音楽ライブとなっており、音を集めていくことでだんだん音楽になっていき、揃ったときにライブが始まるという。

「バーチャルマーケット」の遊び方がわからないという人のために、各会場には案内人botが用意されている。こちらは、日本語、英語、韓国語、中国語など5ヵ国後に対応している。

番匠カンナ@バーチャル建築家氏による「バーチャルミュージアム」の制作秘話

番匠カンナ@バーチャル建築家氏からは、会場のひとつであるノンジャンルの「バーチャルミュージアム」の制作について紹介が行われた。

こちらが制作中の「バーチャルミュージアム」だ。

番匠カンナ氏は、バーチャル空間を設計の対象として活動を行っており、リアルでも建築設計を行っている。過去には、ニュートン記念堂をVR空間に再現したりVR建築コンテストなどを開催したりしている。

最初に作ったイメージボードは、白くて幾何学のようなものが飛んでいるイメージだった。この話が来たときに、番匠カンナ氏は何を作るのか考えたという。これだけ巨大な展示即売会は世界でも最先端でもあるため、それをわかりやすく表現するようにしたという。

この会場を作るためのGeometry(幾何学)として、ひとつめに考えたのは3D Voronoi(3次元ボロノイ図)だ。ボロノイ図とは、ある空間に点を打っていき、そこから近い距離に色を塗り分けていく図のことを指している。たとえば、2025年に開催される大阪万博の平面図でも同様のものが使われている。

ボロノイは中心がなく、各セルがお互いに協力し合い脱中心となっている。そのため、これからの時代のコンセプトのようなものが、2Dのボロノイから作れると考えたそうだ。今回のワールドでは、そのボロノイを3Dにし、80m×80m×10mの空間に点を打っていき、そこにセルを作っている。それぞれの塀のようなところに棒をモデリングしていき、ノリで上部をカットしている。

また、虹色のラインのようなものもシェーダーで描いている。これはネットワークで情報が伝達していくというイメージになっているという。

1967年のモントリオール万国博覧会アメリカ館に、バックミンスター・フラーが考案した「ジオデシック・ドーム」という建物がある。万博と今回のイベントとの共通点があると考え、その模様をスカイボックスに使用している。

実際に出展者から届いたものをブースに入れてみたところ、賑やか要素が足りないことに気が付いた。そこで、木を追加している。この木はボックスの集合体で、デジタルな感じに作られている。

VR空間では、軽量化も重要な要素だ。そこで、木のマテリアルもテクスチャもひとつにしたいと考えて、4分割したものを時間と共に変化するものにしている。ちなみにこのテクスチャは、10秒に1回変化するようになっている。

デジタル空間ならではといった感じの木だ。

建築は、見た目をデザインするというものではなく物事の背景を抽象化して、それを形にしていくものだと番匠カンナ氏はいう。それにプラスして、VR建築では、空間だけではなく音や映像、アニメやグラフィックなどが一体となって、ひとつの経験となるのだ。そのひとつだけを考えていてもダメなのである。そこで、すべての領域を横断していく必要があるため、ひとりで作るのではなくいろんな人に聞いたりチームを作ったりしていく必要があると語り、セッションを締めくくった。 

次回の「VRSionUp! #3」は、「Laval Virtual 2019」の公式報告会と「VTuber番組技術特集」をテーマに、4月12日に開催される。すでに募集も開始されているため、興味がある人はぜひ参加してみよう。

■#VRSionUp! #3 「LavalVirtual2019公式報告会&VTuber番組技術特集」

https://gree.connpass.com/event/122745/

PhotoWords 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑紙の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。