2019
02.04

【World MR News】VTuberの技術を教育現場に活用! 「グリー×千葉大学共同授業」をレポート

World MR News

2018年10月より開催されている、グリーと千葉大学教育学部の共同授業。今回で6年目となるこの試みだが、本年度のテーマとして選ばれたのが「VTuberを活用した授業」だ。これまで数回にわたり千葉大学教育学部の学生たちがVTuberを活用した授業を実施。その集大成として、小学6年生がVTuberになりきり小学4年生からのお悩みに答えていくという授業が行われた。

公開授業としてはこれが最後となるが、本講ではその模様をお届けする。

はじめてVTuberを見た小学4年生の反応は……!?

ちなみに、この日の授業のざっくりとした流れとしては、千葉大学教育学部附属小学校6年2組の生徒35名が8つのグループに分かれ、それぞれ2分30秒という短い持ち時間のなかで、VTuberになりきり小学4年生の質問に答えていくというもの。実際に配信を行うときは放送室に移動し、そこからPCと簡単にキャラクターになりきることができるソフト『FaceRig』を利用して動画を配信していく。さらに、その映像を4年2組の小学生たちが見るという感じだ。

小学6年生のクラス。大学生が授業を行い、これから実施する内容の説明をしていた。

教室のディスプレイ越しに配信を見る小学4年生たちには、ひとりひとりにノートPCが渡されており、チャットサービスの『Sli.do』を使いこなしながら、リアルタイムに自分の思った感想が書き込めるようになっていた。また、それらの模様は6年生の教室にも共有されており、こちらもリアルタイムに反応が見られるという形になっていた。

小学6年生は、この授業に向けてあらかじめ練習が行われている。前回のリハーサルでかなり完成度が高くなってきたそうだが、「4年生に伝わるように、もう少し大きく動きを付けて伝わりやすいように」というアドバイスが授業を受け持っていた大学生から出ていた。

また、小学4年生のクラスではチャットでメッセージを送るということもあり、配信が始まる前には「相手が傷つくようなことは書いてはダメ」というアドバイスも行われていた。

迷いもなく、チャットツールを使いこなしていた小学4年生たち。彼らのPCリテラシーの高さにも驚かされた。

放送室では、キャラクターになりきり4年生のお悩みに答えていた。複数人がひとチームになっていることもあり、役割分担がされていたようだ。

4年生の質問には、「なぜ宇宙人は見えないのか」といったたわいの無いものから、「なぜゴーン会長は捕まってしまったのか」といった、社会派な質問まで、様々なものが寄せられていた。

たとえば「どうすれば勉強に集中できますか」という4年生からの質問に対して、6年生は「今勉強しなくても大丈夫! 6年生になって始めても間に合うから。みんなどう思う?」と答え、それを聞いていた4年生からは、「どう思うじゃないよ!」という冷静な突っ込みが入るという場面も。

そうした4年生たちの反応をリアルタイムに見ていた6年生たちからは、「4年生の反応が薄い」という、リアクションに対する感想も聞かれた。

ちなみに小学4年生はVTuberや『FaceRig』といったキャラクターが質問に答えてくれるという情報は事前に教えられておらず、このときが初めての体験となる。そのため、どんなリアクションがあるのかということにも興味があったようだ。

実際に4年生の教室で見ていたときは、キャラクターが画面に登場したときに笑いが沸き起こるなど、それなりのリアクションはあった。しかし8組分連続していたために、中にはあまり大きなリアクションがなかった組も出てきてしまったようだ。

複数の生徒たちが同時に利用しようとしていたためか、『Sli.do』が重くなって文字が打てなくなったり、配信の画面は見えるものの音が出ていなかったりと、こうした試みにつきもののトラブルもいくつか発生していたが、なんとか全8組の配信が終了。

授業の最後には、今回の試みについての振り返りが行われた。実際にVTuberになってみた6年生からは、「難しかったけどキャラクターになりきれた」「どうやって伝わるか考えながら話したらうまくいった」「悩みを解決するために努力したところが良かった。人間同士だと伝えにくいことも、VTuberなどのキャラクターになりきることで、違う形で伝えることができた」といった感想が聞かれた。

また、同時に4年生の感想も円グラフという形でチームごとに紹介されていた。まだまだいくつかの課題はありそうだが、いずれも概ね好評だったようで、VTuberやキャラクターを使用したコミュニケーションの可能性に期待できる結果となっていた。

次回が7回目となるグリーと千葉大学教育学部の共同授業だが、この記事を執筆している時点ではテーマは未定とのこと。いずれにせよ、今後も教育の新たな形が生まれる貴重な場となりそうだ。

Photo&Words 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑紙の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。