2018
12.10

【World MR News】日本と台湾のXR企業によるミートアップイベントが秋葉原UDXで開催――「OMC2018 -XR MeetUP with Taiwan-」レポートその①

World MR News

日本と台湾のXR業界が一堂に会したミートアップイベント「OMC2018 -XR MeetUP with Taiwan-」が、12月3日に東京秋葉原の秋葉原UDXで開催された。

一般社団法人ブロードバンド推進協議会(以下BBA)が毎年開催している、ミートアップイベントの「OMC」。春にも1度開催されたが、今回は今年2度目の開催となる。BBAでは、大手企業とスタートアップ企業や他業界同士のブリッジなど、マッチメイキングを数多く手がけてきている。今回はXR分野に強い台湾企業を招いて行われた。

イベントが行われた会場は秋葉原だったが、この街は日本のサブカルチャーを象徴するような場所だ。一方で台湾は、最新ハードウェアやデバイスに長けている。そのため、両方の親和性が高いという意味でもこのイベントが開催されることとなった。

一般社団法人ブロードバンド推進協議会(BBA) イノベーション部会 部会長/株式会社リンクトブレイン 代表取締役社長 清水弘一氏。

本イベントには、XR Express Taiwanの共同オーナーであるFiona Chen氏も来日。同プロジェクトの取り組みについての紹介が行われた。

XR Express Taiwanは、台湾政府イノベーション政策の一環で行われているもので、XR産業の国内エコシステムの最適化と国際連携の強化を目的としたプロジェクトである。「DIGI SPACE」という、台湾初のXR産業のためのインキュベーター・アクセラレータープログラム、コワーキングスペースの運営も行っている。また、台湾最大のXR産業協会TAVARと共に、多くのスタートアップ企業を育てていこうとしている。

XR Express TaiwanのFiona Chen氏。

DIGI SPACEは、台湾でふたつのインキュベーターを持っている。ひとつは圓山にある「digiBlock Taipei Park」で、こちらは台北市政府の施策で圓山イノベーション産業ゾーンにおいてデジタル産業を導入し、国際化や産業チェーンの形成に力を入れている。

もうひとつのインキュベーターは、登園安東青創基地(Andong youth start-up hub)だ。XR分野以外にも、IoTやデジタルコンテンツ分野であれば申請が可能で、半年間ワーキングスペースが利用することができる。

このようにXR Express Taiwanは、台湾国家の支持でエコシステムの構築に力を入れているだけではなく、海外展開も図っている。そのため今回のイベントでは、台湾のXR産業のスタートアップ企業のチームとして来日しているとFiona氏はいう。

同プロジェクトでは6つの項目について推進しており、国際展示会への公式参加やスタートアップ企業の支援、海外専門家を台湾に招いて業界交流を実施。XR要請セミナーの開催や国内外のアクセラレーターの育成支援、さらに台湾ブランドプロモーションの海外展開などを行っている。

デモ展示企業がサービスを紹介

今回のミートアップでは、メイン会場でセッションが行われていたほか、別室でXR企業によるデモ展示も行われていた。その中から、日本の企業を中心とした取り組みをご紹介する。

■サン電子

名古屋に本社を構えるサン電子。犯罪捜査のシステムの開発やIoT関連、スマートグラス関連の事業を行っている。一般的には、『いっき』や『アトランティスの謎』、『上海』などを開発したゲームメーカーとしてのほうが有名かもしれない。

今回同社が展示していたのは、スマートグラス『AceReal』を活用したソリューションだ。こちらはオールインワンで提供しており、スマートグラスから業務用アプリ、ソフトウェア開発キットに保守サポートまでを自社で行っている。

『AceReal』のコンセプトは、現場業務で使えるスマートグラスである。防塵・防滴対応やヘルメット着用対応、高温環境でも動作するほか、視界を遮らないクリアレンズが採用されている。あくまでも現場業務で使うことを想定しているため、エンタメ系やスポーツ観戦向きではない。

アプリ機能としては、遠隔支援用のビデオチャットやマニュアル表示、チェックリストなどの機能も提供している。そのほか、画像認識型ARや音声認識、モノビットのビデオチャットが入ったSDKの提供も行っている。そのため、購入後すぐに使うことができるというところも特徴のひとつだという。

■ホロラボ

ホロラボは、製造業・建設業向けの『AR CAD Cloud』の紹介が行われた。『HoloLens』のリリース日とともに会社を設立したという同社。この『HoloLens』繋がりで、業界業種を問わず様々な企業と仕事をしているという。その中で、今回のイベントで展示されていたのが『AR CAD Cloud』だ。

こちらを利用することで、ブラウザ上からCADデータなどをアップロードすることで、自動的に最適な環境に変換し、『HoloLens』で見られるようになる。あまりITリテラシーが高くない人でも、簡単に利用出来るというのが特徴だ。コンバータ部分を刷新することで、BIM(Building Information Modeling)の対応も行っている。活用シーンとしては、建設・建築といった現場支援が主なものとなっている。

同社から見た『HoloLens』という話題では、今年1年取り組んできてそのうちの4割は製造業で3割は建設業だったという。こうした状況から、『HoloLens』と製造業・建設業の相性の良さがわかる。

その中で何が期待されているのかというと、4分の3は現場作業支援だ。それ以外にコミュケーションやトレーニングも入ってくるが、いきなり実現場というのはリスクもあるため、トレーニングを入れているという。

■ポケット・クエリーズ

「Mixed Reality技術で働き方に『革命』を」をテーマにしているポケット・クエリーズでは、MRソリューション『QuantuMR』の紹介が行われた。この『QuantuMR』は、東京電力ホールディングスと共同開発を行っているもので、発電所や変電所のメンテナンス業務の最適化と効率化、ベテラン技術者の技術後継などに活用するためのMRソリューションだ。

『QuantuMR』は、サーバと『HoloLens』を連携することで情報を量子化し、時間と空間を超越して情報を共有することができるのが特徴である。

MRはスマートフォンに置き換わる標準的なデバイスになると同社では考えている。そのため、現在開発しているものはB to Bを基準にしているが、AIやIoTに関する研究開発も平行して実施。リアルでは何もない空間に広告や立体映像を表示したり、遠隔地の人とビジネスやゲームができたりするといったSF映画のような世界を実現するためのソリューションを提供していく。

■STARVR

STARVRは、VRのソリューション提供者としてパートナーに提供している。2016年にエイサーと会社を設立。2017年にエンターテイメント関連でIMAXのVRを開始している。また、日本でもゲームセンター向けに提供を開始している。今後は様々なパートナーと提携し、VRの展開をしていく予定である。

現在提携を行っている市場は、エンターテイメントのほか設計デザインやシミュレーションなど多岐にわたる。

最新機種のVRヘッドセット『STARVR ONE』では、水平視野角210度の広視野角が特徴のデバイスとなっている。これは人間とほぼ同じ視野角であるため、脳が本物と錯覚してしまうという。

この『STARVR ONE』には、tobii製のアイトラッキングシステムが搭載されており、見ている部分の映像がはっきり見えるような仕組みになっている。

■リンクトブレイン

リンクトブレインは、STARVRとダフトクラフトの3社でコラボレーションしたブースを出展していた。コンセプトは、「HMD」「コンテンツ企画」「データ利活用」だ。プロトタイプとしてドローンのシミュレータを作っており、視点を切り替えることができるほか、将来的にはドローンの航跡をログに記録し、パイロットが出来ているかどうかという要素を盛り込んでいくという。

元々ゲームを作ってきた同社だが、エンタープレズのソリューションは「ビジュアライゼーション」のリアリティを追求し、フォトグラメトリーでデータを落とし込み、ゲームの世界観を作ってきたのが最初である。

その後XRの依頼が入ってきて、こちらでもリアリティを追求したモノ作りを行っている。今は、この先にあるHMI(Human Machine Interface)デザインで日本の大手企業とコラボレーションを行っていく予定だ。

また、ダフトクラフトとコラボし、5感で体感したことをデータ化して集積し可視化する『OWL VISION』というツールを開発している。『STARVR』のヒートマップを可視化し、どこを見ているかやどこに頭を向けているのかといった情報を常に蓄積し、表に出していくというものだ。こちらは、工場やアシスタントのARといったところに使っていく。今のところ、ローンチは2019年の春で、CBTの募集も行っているとのこと。

Photo&Words 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑紙の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。