10.31
【World MR News】日本マイクロソフト、「デジタルトランスフォーメーションにおける最新インフラへの移行支援に関する記者説明会」を実施
日本マイクロソフトは、10月30日(火)に品川本社オフィスで「デジタルトランスフォーメーションにおける最新インフラへの移行支援に関する記者説明会 ~ハイブリッドクラウド戦略~」を開催した。
マイクロソフトは、クラウド製品のAzureを使い、ユーザーのデータをデジタル化し産業革命を起こそうとしている。しかし、「Windows Server 2008」や「SQL Server 2008」といったレガシーなOSが、世の中には多数残っているのが現状だ。
こうしたOSやデータベースが市場にたくさんあり、ミッションクリティカルなアプリケーションや大きなファイルサーバーとして利用されている。そうしたものを、なるべく早い段階でクラウドに移行しないと貯まっているデータや業務アプリケーションから得られるデータをうまく利活用することができない。ここが、日本におけるデジタルトランスフォーメーションの大きな障害になっていると浅野氏はいう。
日本マイクロソフトでは、そうしたレガシーなシステムをAzureに上げてもらうための支援を発表している。ひとつは、サーバー移行支援センターを起ち上げ、多くのユーザーにアプローチし、困っていることを吸い上げながらパートナー企業と共にコンサルテーションなどを行っていく。
その中のひとつとして、レガシーな「Windows Server 2008」をAzureにリフト&シフト乗せる場合、サポート終了から数えて3年間セキュリティパッチの提供を無償で継続する。
約6割がレガシーなサーバーのクラウド化を検討
同社の営業が付いているアカウントについては、営業自身が実際にユーザーのところに行きアセスメントなどを行っている。それ以外のユーザーについては、約4千数百名にアプローチを行っている。
そこでわかったことは、約6割が今後オンプレミスのレガシーなサーバーはクラウドに乗せたいと考えていることだった。その中の半数は、Azureを検討していると答えている。
その中で、実際にスタートしたのは数百社だ。レガシーサーバーを100とした場合、25パーセントはファイルサーバーとして使われている。52パーセントはLoBアプリケーションで、それ以外の組み込み系のサーバーやAD、Eメールサーバとなっている。
この中で大きな割合を占めるファイルサーバーと、LoBアプリケーションの移行が、Azureにとっての大きな移行のポイントとなる。
そうした中で、いくつかの課題も上がってきている。実際にファイルサーバーを移行しようと思ったときに、数テラバイトもあるようなデータを動かそうとすると非常に転送速度にコストが掛かってしまう。社内のネットワーク負荷が、ファイルサーバーを移行するということで占有され、ほかの業務にも影響を与えてしまうのだ。
また、社内のネットワーク回線が細い場合、クラウドに持っていってもアクセススピードが遅くなることがある。そうしたことから、やってみたけど難しいという声が上がってきたという。
アプリケーションでは、IDの管理やセキュリティはどうすればいいのかといったことや、アプリケーションでもオンプレミス側とクラウド側の両方に残る場合もある。このように、大きく分けて6つの課題がユーザー側から寄せられた。これらの課題は、「ハイブリッドクラウド」を活用することで解決できると同社では考えている。
本当の意味でもハイブリッドクラウドを提供
このハイブリッドクラウドと呼ばれるものには、いくつかのパターンがある。大手のクラウドベンダーなどが行っているのは、実際はクラウドに持って行くと戻せないなど一方通行のものが多い。
それに対して、たとえばマイクロソフトの『Office 365』はAzure ADで動いている。日頃PC上で行う業務管理とこれから動かすファイルサーバーのアクセス管理とそこに対するライツマネージメントといったものを、ひとつのアクティブディレクトリーを基礎にして、オンプレミスにあろうがクラウドにあろうが連携してアクセス管理を一元的に行うことができる。
アプリケーションでは、ユーザーが自分自身で運用管理を行うオンプレミス型の「Azure Stack」とAzure Serviceの間で行き来ができる。データに関しては、SQLは当然のことながら、それ以外の様々なデータベースも簡単にクラウドに持っていくことができる。
また、セキュリティもオンプレミスインフラとクラウドで同様の管理を一元的に行えるほか、行ったり来たりすることもできる。こうしたものができて、初めて新のハイブリッドクラウドと言えるのだ。
シームレスなAzureとの連携を実現した新OS『Windows Sever 2019』
これらをサポートするのが、10月2日にリリースされた新OSの『Windows Sever 2019』だ。これを使うことで、よりシームレスにAzureとの連携が行えるようになる。このシームレスというのは、Azureを使うことを意識していなくても、裏でAzureが使われているような機能が備わっているからである。
データセンターのハイブリッドでは、『Windows Sever』を意識することなくAzure上のファイルシステムと『Windows Sever』上のファイルシステムの同期を取り、オンプレミスにあるほうをキャッシュのように使うことができる。同様のものをAzure側でも持ち、Syncされる機能があらかじめ備わっている。
「Azure Center」という管理ツールを使うことで、シームレスにAzureにバックアップするほか、サイトリカバリーを行うことができる。Azureに仮想ネットワークとどのように結ぶのかといったコンフィギュレーションも簡単に行うことができる。
アプリケーションの対応では、オンプレミス側でKubernetsの対応を『Windows Sever』自身が行っている。そのため、Linux側で作ったものが『Windows Sever 2019』で動いたり、『Windows Sever 2019』で作ったコンテナサービスをLinux上で動かしたりすることもできるのだ。
ハイブリッドに関する世間の期待感は高まっている
『Windows Sever 2019』とAzureのハイブリッドソリューションにより、ファイル転送のレイテンシーもAzureの機能を使うことで高速にクラウドストレッジとリンクをすることができる。
ハイブリッドのインフラ管理やAzure ADを利用することで、IDを主としたアプリケーションの管理やアクセス管理などを一元化することができる。さらには、Azure Stackを使った規制対応やSQL DB Managed Instanceを使うことで、オンプレミスとクラウドの混在管理も行える。
クラウドの利用状況は、他国に比べて20ポイント程度遅れた16パーセントにとどまっている。しかし、ハイブリッドクラウドを視野に入れて事業戦略を立てているユーザーは、84パーセントまで上昇している。これは1年前と比較して、55ポイントも上がっているのだ。
『Windows Sever』の日本における出荷の伸び率は、今年の4月から「Hybrid Benefit」を使う形で昨年と比較して40数パーセントも伸びている。つまり、ハイブリッドに関する世間の期待感が高まっているとも言える状況だ。
日本マイクロソフトでは、『Windows Sever 2019』の新しいハイブリッド機能を使い、デジタルトランスフォーメーションを推進していきたいと考えている。
目先の目標としては、2020年1月までに『Windows Sever 2019』を使って80パーセント以上のユーザーがハイブリッドの機能を使ってもらうことを目指している。
【導入事例】ソフトバンク コマース&サービス(導入先:Next Read)
ソフトバンク コマース&サービスによるNext Readの導入事例の紹介も行われた。このNext Readは2017年に設立され、働き方改革を推進している会社だ。地方の中小企業をターゲットにしており、ITを活用したソリューションなどを展開している。
そのため、プロジェクトが日本全国にあり、複数のプロジェクトを進めているためファイルや情報が散在しているという課題があった。また、過去の事例や経験を活用したいというときにも、活用するのが難しい状況であった。
今回の事例では、元々『Windows Sever 2019』を導入することが決まっていたため、「Azure File Sync」を使いファイルサーバーとAzureを連携させている。結果的に、ファイルサーバーを使ってもAzure側のクラウドを使っても、双方向で同期が行われるようになり、複数拠点での情報共有や作業が行えるようになったとのこと。
同社では、Azureがオープンチャンネルで販売されるときに、Azure相談センターを起ち上げている。そこで、購入前の相談を受けている。先ほどのNext Readからも相談があり、高速なファイルアクセスが必要で共有の柔軟性も必要であるという要望があったという。
なかでも重要だったのが、様々なところでプロジェクトがスタートして終わったら閉じるということがあるため、ライセンス管理が煩雑になるというところだったという。その課題を「Azure File Sync」を使って解決している。
【導入事例】GMOインターネット
GMOインターネットは、インターネットインフラ事業と金融事業、EC事業、広告メディア事業、仮想通貨マイニング事業の大きく分けて5つの領域で活動している。特に、クラウドホスティングを中心にいしたインターネットインフラ事業は、グループの大きな柱となっている。そうした中で、この8年間で『Windows Sever』は約13万の仮想サーバーを提供している。
今回同社が『Windows Sever 2019』を使って、新しいサービスを開発することになったのだが、元々は『Windows Sever 2016』で開発が行われる予定であったという。その開発途中で新バージョンのアナウンスがあった。
同社が新しい機能を採用することによりユーザーに喜んでもらえ、利益も上げることができる可能性があるということから、『Windows Sever 2019』で開発を行うという決定がされたという。
新しいOSや製品にバグはつきものでもあるが、これまで20年間マイクロソフトの製品を扱ってきた経験からある程度のリスクは承知の上で、ユーザーにも喜ばれるなどメリットのほうが大きいことから採用されている。
『Windows Sever 2019』の中でも注力したのが、ReFSという新しいファイル形式で重複除去が可能になったところだ。サーバーの中に主要できるユーザーの仮想環境の大幅は集約率の向上や、個々のサーバーごとのパフォーマンスアップも期待できるという。これにより、さらに低価格でパフォーマンスの高いサーバー作りが可能になるとのこと。
Photo&Words 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑紙の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。