2018
07.04

【World MR News】MRコンテンツ開発先進企業が語るビジネス展開予測――「第8回VRビジネスフォーラム」レポートその④

World MR News

6月22日に東京・恵比寿のフェローズでMixed Reality開発先進企業によるセミナー「第8回VRビジネスフォーラム」が行われた。

本稿ではその中から、第2部に行われたパネルディスカッション「MRコンテンツ開発先進企業に聞く!これからのMRビジネス展開予測」の模様をお届けする。

登壇者は、バンダイナムコスタジオ 未来開発統括本部 グローバルイノベーション本部 フューチャーデザイン部 イノベーション課 本山博文氏、ポケット・クエリーズ 代表取締役 佐々木宣彦氏、Psychic VR Lab VRデザイナー メディアアーティスト God Scorpio氏で、モデレーターを務めるのはVRデザイン研究所 ラボ担当/VRエンジニアの月田直樹氏だ。

▲モデレーターのVRデザイン研究所 ラボ担当/VRエンジニア・月田直樹氏。

――最近気になったMR関連のニュースやトピックはありますか?

本山氏:最近だとMagic Leapがいろんな取り組みを発表しているところが気になっています。たとえば映画スタジオFramestoreとパートナー契約を提携したり、ニュージーランド航空と提携したりといろいろとやっています。(MRは)VFX映画のように現実にCGを合成させるエンターテインメントと相性がいいので、夢を現実のように見せることが得意な映画のスタジオと組むのかと思いました。

佐々木氏:『Oculus Go』が最近出ました。回りでいいよと言われてうちでも買って試してみました。やっぱり、いいですね(笑)。なにがいいかというと、値段もありますがフェイスブックのアカウントと連動していろんな人とコミュニケーションできるところが、すごくいいなと思いました。MRでもそういうしかけは大事で、コミュニケーション、通信などは、あらためて取り組まなければいけないなと思いました。

ひとつ事例をご紹介すると、犯罪現場で人が倒れていた場所を示すのに『Microsoft HoloLens』を使っていましたが、あれは実用的な香りがしました。

▲ポケット・クエリーズの佐々木宣彦氏(写真左)とバンダイナムコスタジオの本山博文氏(写真右)。

――MRでコミュケーションはどうなっていくと思われますか?

God Scorpio氏:知り合いに精神科医の先生が岡山にいるのですが、最近は遠隔治療もできるようになってきてカウンセリングも家から出たくないけど、相手が目の前にいるという緊張感もほしくなってきます。そうしたところで、使われるようになってくるのかなと思っています。

あと、Leap Motionの『North Star』がすごくて、側の部分のデータが出ています。それを3Dプリンターで出力すれば見た目の部分は作ることができます。最近知り合いの会社の人が中のディスプレイ部分を作っていて、うちでも3Dプリントしていたので付けてみたら、顔に当たって痛いんですよ(笑)。付けてみないとわからないなと思いました。

今のVRはハンドトラッキングではぜんぜん取れないので、操作に対して肘で行う解像度だと思っています。手全体が取れるようになるとMRやVRがどうなるのか気になりますね。むしろなんでマイロソフトは、『Microsoft HoloLens』でその辺をやってないのだろうと思っています。

▲Psychic VR Lab VRのGod Scorpio氏(写真左)。

――2020年までにMR技術はどのように変わると思いますか?

本山氏:2020年ってもうすぐですよね。今やっていることに繋がるのが2020年なので、逆に近すぎて話しづらいですね。ハードウェアはどんどんベターになっていくのではないでしょうか? VRデバイスの進化のように、Cheaper とk Lighter とか Smaller とか「er」ですね。より軽くなるとかは希望です。2025年だったら理想的なデバイスになっているといいですね・・・・・・(笑)

個人的に、プロジェクションマッピングを使ったHMD型ではないVR製品にも関わっている経験から、子供たちのエンターテインメントを考えるとメガネ型デバイスが一番いい環境なのか、少し悩んでいるところもあります。また映画とかで、人は本当にリアルなものを見ると、眼鏡を外すような演技もしますよね。それがメガネ型デバイスでいいのか(笑)

――では、Keiichi Matsudaさんの『HYPER-REALITY』に出てくるような世界は、いつ頃になると思われますか?

God Scorpio氏:『さよなら、インターフェイス』という本がありますが、たとえばBMW用のアプリでカギを開けるというものがあったときに、まずケータイを出してロックを解除してアプリを探して、アプリを起動して解除をするってめちゃくちゃ時間が掛かってカギのほうがいいんじゃという話があります。

『HYPER-REALITY』もそうですが、OSとアプリケーションの区別がないような状況になっています。いちいちアプリケーションを起動してというのはすごくダルくて、OSの考え方やそもそもアプリケーションと言えるのかという話も出てきます。そこがシームレスにならないと、ダルいし使いたくないですね。(ゴーグルを)被るだけでハードルが高いので。

本山氏:Keiichi Matsuda氏のビジョンのような選択ベースのUIが埋まる未来、または、ボイスで選ばずにオーダーすることが主流になっていく世界の中で、はたして(MRは)選択が増える世界に行くのか。ミニマリズムなシンプルな世界になるのか。その辺は、(ハードを製作する)会社によってなのか(使う)人によってなのか誰かビジョナリーがいて決めるのか。世界がどうなるのかこれから楽しみですね。

佐々木氏:使いやすいインターフェイスはなんだろうと考えていますが、まだ想像できないですね。未来的なものはイメージ先行でカッコイイというのが、昔からあります。本当に使いやすいのかというのとは、また違うと思っています。その答えがどういう方向にいくのかは、正直まだ見えません。

God Scorpio氏:2019年に渋谷PARCOが建つので、そこのワンフロアでMRが使えるようにしようという話をしています。作らないといけないんですよね(笑)。いきなり作り始めようとしても失敗するので、そもそもの基礎を人間工学的や建築ベース的に考えられることを踏まえないと、絶対その瞬間のコンテンツになってしまうというのは意識としてあります。

――MRビジネスは、2020年にかけて、どう進化・推移すると思われますか?

佐々木氏:東電さんと一緒にやっている案件では、我々は先の新しいことを考えようとしています。しかし、そこまでのことは求められてなくて、シンプルに毎日使い続けられるもの。できるだけ簡単なもの・・・・・・自分たちから見ると、本当にそんなものでいいの? というようなものが求められています。その意識の違いは考えておかないと、先進的だけど話題だけで終わってしまう意味がないものになってしまいます。そこが自分たちとしては、気を付けなければいけないなと最近は思います。

God Scorpio氏:今だと舞台にアクターが出てきてパフォーマンスをするというのが、MRを使うことで体のないアクターのようなものを表現することがでるかもしれません。そうしたものを、10月ぐらいにやろうと思っています。

本山氏:(God Scorpio氏のお話のように)舞台を使ったリアルエンターテインメント、他にもアニソンのライブエンターテインメントでも、MRは相性がいいと思っています。リアルな人間とデジタルな人間、アニメのアクター、リアルとデジタルなスペシャルエフェクト、リアルとデジタルの融合で、また新たなカタチのエンターテインメントが生まれるじゃないかと考えています。

――2018年後半に、MRのどんなことにチャレンジしていきたいですか?

佐々木氏:『QuantuMR』というソリューションを今展開しようとしています。東電グループの中で作って行きますが、その後はライバルではあるけど協力関係にもある同じ業種の企業にどんどん横展開をしていく道筋をつけていこうというのが目標です。

本山氏:私が所属しているフューチャーデザイン部は、基本的にゼロから1を生み出して新しいエンターテイメントを作るというのがミッションです。それを作って1から100にするのは、ほかの部署で担っていきます。0から1、日本初、世界初というものをどんどん仕掛けていきたいと思っています。

God Scorpio氏:7月からラボができるので、そこでちゃんとデザインベースみたいな部分の考え方を組み込んでいきたいと思っています。VRやARのエンジニアじゃない人たちのナレッジをいかに吸収したり、彼らがやりたいことを実現できたりするようなプラットフォームとして『STYLY』をやっています。そのツールとして誰でも使えるようにするという部分を、組み込んでいくというのが目標です。

2019年にPARCOさんとやっていることがあるので、現場でどう実用として使えるようなものがデティールとしてありうるのかというのをやっていこうとしています。

 

Photo&Words 高島おしゃむ
コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。
雑紙の執筆や、ドリームキャスト用のポータルサイト「イサオ マガジン トゥデイ」の
企画・運用等に携わる。
その後、ドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年より再びフリーで活動中。