2017
12.11

MRで働き方を変える ―Microsoft Tech Summit 2017―

World MR News

-マイクロソフトは働き方を変えられるか?-

あのマイクロソフトが「働き方改革」に乗り出した――!!

昨年好評を博した日本マイクロソフト株式会社(以下、マイクロソフト社)による一大イベント「Microsoft Tech Summit」が、今年も11月8、9日の2日間にわたり、ウェスティンホテル東京にて開催された。

IT技術者を対象とした本イベントで、マイクロソフト社が打ち出したテーマは、意外にも「働き方改革」――2016年9月に安倍晋三首相が提唱した、労働環境の改善に関する政策のひとつ、であった。

「働き方改革」とは一体何か?

今、日本の労働人口は、少子高齢化により減少の一途をたどっている。労働人口の減少は生産力・国力の低下に直結し、このままでは日本という国自体が非常に危うい。

そこで政府は「一億総活躍社会」をスローガンに、多様な働き方を可能にし、女性や高齢者など、現在労働市場に参加していない人々にも働くチャンスを与え、労働人口の増加を目指している。それが、「働き方改革」だ。

日本マイクロソフト株式会社 執行役員常務 伊藤かつら氏

さらに、長時間労働や、正社員と非正規社員の格差を解消し、よりよい労働環境を整えることも、政策のうちに含まれる。すべての国民が無理なく働き、仕事にやりがいを見出すことができれば、生産力や国力は自然と上がっていく、というわけだ。

さて、マイクロソフト社は、最新テクノロジーを使い、どのようにして「働き方改革」に一石を投じるつもりなのだろうか。

確かに、技術は時に人の生活を一変する。たとえば、18世紀から19世紀にかけて起こった産業革命は、作業効率を飛躍的に上昇させ、また近年においても、インターネットやスマートフォンの普及が情報伝達を格段に速くした。

では、「働き方改革」の場合はどうか。

マイクロソフト社が挙げた、注目すべき最新テクノロジー3点のうち、ここではMR(Mixed Reality=複合現実)に的を絞って紹介する。

-近い将来、会議室がなくなる!?-

「Microsoft Tech Summit 2017」では、実際の工事現場と会場をMRでつなぐデモンストレーションがおこなわれた。要するに、MRを使ったウェブ会議である。

デモの担当者である日本マイクロソフト株式会社Windows&デバイスビジネス本部の三上智子氏は、登壇すると「ホロレンズ」を着用した。

この「ホロレンズ」は、マイクロソフト社が開発したヘッドマウントディスプレイ型の表示装置で、ゴーグルのように身につければ、現実世界にバーチャル映像を重ねて映し出すことが可能になる。

会場の大きなスクリーンに、三上氏がホロレンズ越しに見ている光景がリアルタイムに流れる――それは、橋のバーチャル映像だった。

写真)小柳建設株式会社「Holostructure」

三上:これは実際の橋のデータを使って3Dホログラム化していますので、非常にリアルに、360度どこからでも見れるんです。これまで図面で計画していた建設工程を3Dで確認できるということは、瞬時に、そしてより効果的に建設計画が立てることができるということになるんですね。しかもこの、ホロレンズの特徴は、複数の皆さんとこの同じホログラムを共通で見て、コラボレーションすることができるんです。ではここで、橋の建設地にいる現場監督の増田さんとつながってみたいと思います。増田さーん。

すると、スクリーンに青いアバターが突然現れた。

写真)アバターが表示される

これが、遠く離れた建設地で同じく「ホロレンズ」を装着した現場監督・増田氏の仮の姿というわけである。

相手ができたことで、いよいよミーティングらしくなってきたが、ここで重要になるのは、MRによる、時差と物理的距離の解消だ。

MRを使えば、各自が別の場所にいながら、同じ映像を見て、同時に話し合うことができる。図面や契約書、写真などのデータも、クラウド上にあらかじめ保存しておくと、ワンタッチで確認することが可能だ。

それだけではない。

写真)視線が表示される

MRで現れた相手のアバターは、本人の頭や体の動きを感知して連動する。また、視線の向かう先もポインターで表示されるため、相手が今、どこに立って何を見ているのか、手に取るように分かるのだ。

デモではその様子を目の当たりにしたが、まるで、同じ会議室に集まり、顔を突き合わせてミーティングをおこなっているような感覚だった。そこには、無駄な時差や空間的な隔たりが一切ない。

三上:皆さんいかがでしたでしょうか。このような形でですね、プロジェクトメンバーが離れた場所にいても、同じ情報を共有することができる。しかも、3Dホログラムで見ているので、より理解が高まりますよね? それぞれのプロジェクトメンバーの知識だったり、スキルだったり、経験だったり、そんなことの偏りをできるだけ標準化して、よりスムーズにプロジェクトを進めることが可能になります。

写真)遠隔地であっても同じ情報を同時に共有できる

圧倒的な無駄の削減である。

現状、電話やメールで個別に対応しているものが、MRを使えば、たった1度の短い会議で、メンバー全員が共通の情報・認識を持てるというのは画期的だ。時間短縮もさることながら、そこには伝達漏れのようなうっかりミスも存在しない。

全員が同時に、同じものを見て、同じことについて話し合い、同じ目標を持つことは、プロジェクト成功への最短ルートではないだろうか。

三上:このソリューションは、建設業界のこれまでもこれからも続くであろうと思ってきた、働き方、仕事の進め方を大きく革新的に前に進める、そんな可能性を持っています。これは建設業界だけじゃないんです。今、いろいろなところで、いろいろな業界ですでにさまざまな取り組みが始まっています。MRのテクノロジーは皆さまの手の中にあるんです。

-MRの秘めたる可能性とは?-

デモンストレーション以外にも、「Microsoft Tech Summit 2017」では、MRが働き方に及ぼす影響のさまざまな可能性が提示された。

MR会議による時間短縮は前述のとおり。仕事の効率化が実現すれば、長時間労働の解消が見込まれる。

そのほか、MRは新人研修にも使用可能だ。

ゴーグル型の「ホロレンズ」は、着用していても作業するための両手を空けていられる。たとえば、工場の生産ラインで作業員が「ホロレンズ」を身につけると、現実で作業している手元に、バーチャルのマニュアル映像を重ね合わせて見ることができる。

不明点は音声でプロにたずねることもできるため、通常の新人研修よりも、分かりやすく、迅速に、戦力となる人材を育てられるだろう。それはすなわち、現状では労働市場に参加していない層を取り込むきっかけとなる。

マイクロソフト社では、工場や工事現場など、最前線で働くファーストラインワーカーこそ、MRで働き方が劇的に変化すると考えており、その人数は全世界で28億人にのぼると推定されている。

写真)ファーストラインワーカーにこそMRが活用される

もちろん、工場や工事現場だけではない。

現時点で、医療、防衛、小売り、教育など、多岐にわたる分野において、MRはその価値を発揮できる可能性を秘めている。実際、日本マイクロソフト社は、MRを用いたパートナーシッププログラムを開始し、6つの企業とコラボすることを発表した。

写真)日本マイクロソフト株式会社 代表取締役社長 平野拓也氏

――MRのある未来が、もうすぐそこまでやって来ている。

私たちの働き方は、一体どのように変わっていくのだろうか。

今ある無駄がMRによって削減され、労働時間が大幅に短縮されると、働くすべての人の心と体に余裕が生まれる。余裕は、新たなアイデアを生み出す原動力となるはずだ。

また、場所を問わずに会議ができるということは、子育て中のママさんも、今よりずっと簡単に職場復帰ができるようになるのではないだろうか。これも、政府の目指す「多様な働き方」のひとつと言っていい。

未来は変わる。技術が変える。

私たちが「ホロレンズ」を装着して仕事をする未来は、そう遠くないのかもしれない。